「秋になるとなんとなく気持ちが沈む」
「朝晩の冷えに体がついていかない」
「眠い・だるい・寂しい……理由はないけど元気が出ない」
そんな“秋のメンタルのゆらぎ”は、
東洋医学でいう「肺」と「悲しみ(悲・憂)」の関係と深く結びついています。
この記事では、秋に起こりやすい心身の不調を「秋バテ」と捉え、
- 東洋医学的な解釈
- 鍼灸でできるケア
- 日常で整える養生ポイント
をわかりやすく解説します。
秋は“肺”と“悲”の季節|五行と感情のつながり
五行論では、秋は「金」に属し、対応する臓腑は肺・大腸。
そして、肺に関わる感情は悲しみ・憂いとされています。
◆ 秋の特徴とメンタル不調の関係
自然変化 | 影響する心身の状態 |
---|---|
空気の乾燥 | 呼吸器・皮膚のトラブル/喉の違和感 |
昼夜の寒暖差 | 自律神経の乱れ/睡眠・気分の揺れ |
日照時間の短縮 | セロトニン不足・抑うつ傾向 |
季節の“終わり” | 感情の切なさ・喪失感(=悲しみ) |
☞ 秋に心が不安定になりやすいのは、自然のリズムに呼応した“生理的反応”とも言えます。
東洋医学で見る秋のうつ・不調のパターン
◆ 肺気虚タイプ
- 呼吸が浅い・声が小さい
- 風邪をひきやすい
- 物悲しい気分/落ち込みやすい
→ 肺の宣発・粛降機能の低下による「気の巡り不足」
◆ 肺燥タイプ
- 空咳・喉の渇き・肌の乾燥
- イライラ・不安感
→ 乾燥による津液不足が心身の“うるおい”を奪う
◆ 肝肺不和タイプ
- 秋のストレスが溜まり、肝気が肺を傷つける
- 深いため息/不眠/情緒の揺れ
→ 「悲しみの過剰」×「巡りの停滞」による複合パターン
鍼灸で整える「肺と心」のバランス
◆ ① 肺気を補い、気を巡らせる
ツボ名 | 作用 |
---|---|
肺兪(はいゆ) | 肺の気を補い、呼吸を深くする |
太淵(たいえん) | 肺経の原穴、気を巡らせる要穴 |
中府(ちゅうふ) | 胸の詰まりを抜き、呼吸と気分を整える |
💡 鍼の刺激はソフトに、「吸う・吐く」のリズムを感じながら施術するのがポイント。
◆ ② 肺燥・乾燥タイプにはうるおいを与える
- 陰谷・照海・列缺など、陰液を養うツボも併用
- 顔面・喉・呼吸器に“うるおい”を意識した施術を
◆ ③ 情緒の安定とリリースにはこちら
ツボ名 | 目的 |
---|---|
神門・内関 | 悲しみ・不安・緊張に |
太衝 | 肝気の巡りを整えて感情をゆるめる |
百会 | 精神を安定させ、うつ的感覚を軽減する |
➡ “こころの息苦しさ”と“呼吸の浅さ”をつなげて考える施術視点を持つと効果的です。
鍼灸師が伝えたい秋のセルフケア
✅ 呼吸を深める習慣を作る
- 朝の5分、胸を開いてゆっくり深呼吸
- 秋空を見上げて“呼吸の伸び”を意識する
- アロマや白湯と一緒に“リラックス呼吸”タイムを
✅ 肺を養う食べ物を取り入れる
食材 | 効果 |
---|---|
白きくらげ・はちみつ | 肺をうるおす・咳や乾燥の緩和 |
梨・大根・長芋 | 肺の熱を取り、津液を補う |
白ごま・ごぼう | 腸の巡りを良くし、肺の働きを助ける |
💡「白い食材」は“肺の色”とされ、五行的にも肺の働きを補います。
✅ 寂しさや悲しみを「悪い感情」としない
- 「秋は、寂しくなる季節」と知っているだけで楽になる
- 話す、書く、歩く——感情を外に出す“出口”を持つ
- 予定を詰めすぎず、“余白”のある生活設計を
まとめ|秋の感情のゆらぎに、鍼灸ができること
秋は、物事が静かに“閉じていく”季節です。
それに呼応して、心も「切なさ」「寂しさ」「終わりへの感覚」を抱きやすくなります。
東洋医学ではそれを「肺と悲の季節」として、
- 気を補い、呼吸を深く
- うるおいを与え、乾燥を防ぐ
- 感情のめぐりをととのえる
というケアで、心身をやさしく支えます。
うつ症状のように見える秋の揺らぎこそ、
自然の一部として“そっと整える”鍼灸の力が活きる領域です。
どうか、患者さんにも施術者自身にも「深く息をする時間」を。
それが、秋を軽やかに生き抜くヒントになります。
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