筋筋膜性疼痛症候群とは
筋筋膜性疼痛症候群(MPS:Myofascial Pain Syndrome)は、筋肉や筋膜の一部に発生する硬結(いわゆる「しこり」)が原因で、痛みやコリ感が広範囲に広がる疾患です。特に、肩や首、背中、腰など、日常的に負担がかかる部位で発生しやすく、慢性的な痛みに悩まされることが多いです。
筋筋膜性疼痛症候群の特徴と原因
特徴
- トリガーポイントの存在
- 筋肉や筋膜の硬結が触診で確認できる。
- トリガーポイントを押すと、広範囲に痛みが放散する(関連痛)。
- 慢性的な痛み
- 痛みが局所に留まらず、全身のコリ感やだるさにつながることもあります。
- 日常生活への影響
- 動作時に痛みが増強し、運動制限が生じる場合があります。
主な原因
- 筋肉の過度な負担:姿勢の悪さや反復動作による筋肉の酷使。
- ストレスや疲労:筋肉の緊張が高まり、血行不良を引き起こす。
- 外傷やケガ:筋肉が損傷し、慢性的な硬結が形成される。
- 冷えや循環不良:筋肉や筋膜の柔軟性が低下する。
鍼灸が筋筋膜性疼痛症候群に有効な理由
鍼灸は、筋筋膜性疼痛症候群に対して次のような効果をもたらします:
1. トリガーポイントへの直接的な刺激
鍼で硬結をピンポイントで刺激し、筋肉の過緊張をほぐします。これにより、関連痛の緩和が期待できます。
2. 血行促進
鍼灸の刺激が血流を改善し、筋肉に必要な酸素と栄養を供給。これにより、硬結の改善をサポートします。
3. 神経の鎮静作用
鍼灸は神経の過敏状態を抑える効果があり、痛みの感覚を軽減します。
4. 筋膜の柔軟性向上
硬直した筋膜の滑りを良くし、筋肉の動きを正常化します。
5. 自律神経の調整
ストレスが原因の場合、鍼灸で自律神経を整えることで筋肉の緊張を緩めます。
筋筋膜性疼痛症候群に効果的なツボ
1. 肩井(けんせい)
- 位置:肩の頂点。肩甲骨の中央部に位置。
- 効果:肩や首の緊張を緩和し、血行を促進します。
2. 天柱(てんちゅう)
- 位置:首の後ろ、髪の生え際のくぼみ部分。
- 効果:首から肩にかけての痛みや緊張を軽減します。
3. 腰眼(ようがん)
- 位置:腰部の左右のくぼみ。
- 効果:腰の筋肉のこわばりを和らげ、痛みを軽減します。
4. 承山(しょうざん)
- 位置:ふくらはぎ中央のくぼみ。
- 効果:下肢の緊張を緩和し、全身の血流を改善します。
5. 阿是穴(あぜけつ)
- 位置:硬結のある痛みの箇所(トリガーポイント)。
- 効果:直接的に硬結をほぐし、関連痛を抑えます。
鍼灸施術の具体的アプローチ
1. 局所治療
トリガーポイントに鍼を刺入し、硬結を直接刺激。筋肉の緊張を緩めることで、痛みを軽減します。
2. 全身調整
局所の治療に加え、経絡(けいらく)の流れを整える施術を行い、全身のバランスを改善します。
3. 温灸や吸い玉の併用
冷えが関与している場合は、温灸で筋肉を温めたり、吸い玉で血流を促進します。
4. 施術後のアドバイス
ストレッチや姿勢改善などのセルフケアを指導し、再発を予防します。
セルフケアの提案
- ストレッチ
- 肩や首、腰の筋肉を伸ばすストレッチを日常に取り入れる。
- 温めケア
- 湯船にゆっくり浸かる、温湿布を使用するなどして筋肉を温める。
- 正しい姿勢の維持
- 長時間の座り仕事では、適度に立ち上がり、肩や背中をほぐす。
- リラクゼーション
- 深呼吸やマッサージで筋肉の緊張を緩め、リラックスを心がける。
まとめ
筋筋膜性疼痛症候群は、硬結(トリガーポイント)が原因で広範囲に痛みを引き起こします。鍼灸治療は、硬結を直接刺激してほぐし、血流を改善する効果的な治療法です。また、全身のバランスを整えることで、根本的な改善と再発予防を目指します。
鍼灸治療に加え、セルフケアを継続的に行うことで、より快適な生活を取り戻しましょう。
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