はじめに
鍼灸院の集客やブランディングにおいて、ホームページやSNSでの画像発信は欠かせません。しかし、画像利用には著作権や肖像権といった法的な権利が関わり、安易に使用すると法的トラブルや信頼失墜を招く危険があります。特に医療分野では患者の個人情報保護や広告ガイドライン遵守も求められるため、一般の店舗以上に慎重な対応が必要です。本記事では、著作権・肖像権の基礎知識から、鍼灸院で安全に画像を活用する方法、患者写真の同意取得方法、トラブル回避のための運用ルールまで、実務に直結する内容を解説します。
1. 著作権とは
著作権は、創作物を作った人(著作者)がその利用をコントロールできる権利です。写真やイラスト、文章などは創作と同時に自動的に著作権が発生します。他人が撮影した画像やデザインを無断で使用することは、著作権侵害となる可能性があります。インターネット上で見つけた画像も「フリー素材」と明記されていない限り、無断利用は避けなければなりません。
2. 肖像権とは
肖像権は、本人の許可なくその顔や姿を撮影・公表されない権利です。患者やスタッフの写真をHPやSNSに掲載する場合は、必ず本人の同意が必要です。特に施術中の写真は医療行為に関連する情報であり、プライバシーの観点からも厳格な取り扱いが求められます。
3. 安全な画像利用の方法
- 自院で撮影した画像を使う:院内設備、施術風景、スタッフ写真などを自分で撮影し、著作権者となる。
- フリー素材サイトの活用:商用利用可・クレジット不要の条件を満たすサイトを選び、利用規約を確認。
- 有料ストックフォトの購入:信頼性が高く、利用許諾が明確。
- クリエイターへの依頼:オリジナル撮影やデザインを依頼し、利用範囲を契約で明確化。
4. 患者写真利用の注意点
患者の施術前後写真や顔写真を使う場合は、書面による同意が必須です。同意書には以下を明記します。
- 使用目的(HP掲載、SNS投稿など)
- 掲載媒体と期間
- 匿名・モザイク処理の有無
- 取り消し条件と手続き方法
また、広告ガイドラインにより、施術効果を保証するようなビフォーアフター写真は原則禁止されています。症例紹介として掲載する場合も、事実に基づき客観的な説明を添える必要があります。
5. 避けるべきNG事例
- 他院のHPやSNS画像を無断使用
- Google画像検索で見つけた写真の転載
- 同意なく患者の顔が映った写真を掲載
- 効果を断定するビフォーアフター写真の投稿
これらは著作権侵害や肖像権侵害、広告規制違反の可能性が高く、損害賠償や行政処分のリスクがあります。
6. トラブル回避のための運用ルール
- 素材の出所を必ず記録する
- 患者・スタッフ写真は必ず同意書を取得
- 使用前に広告ガイドラインを確認
- SNS運用担当者に権利関係の教育を行う
- 画像の削除依頼があれば速やかに対応
7. 院内マニュアルの整備
著作権・肖像権対応を院内マニュアルに組み込み、誰が運用してもルールを守れる状態にします。定期的に内容を見直し、新しい媒体や機能(リール動画、ストーリーズなど)への対応も追加します。
まとめ
鍼灸院がHPやSNSで画像を活用する際は、著作権と肖像権を正しく理解し、法的・倫理的に安全な方法を選ぶことが不可欠です。特に患者写真はプライバシーに直結するため、必ず事前に書面で同意を得てから使用し、広告ガイドラインの規制を遵守します。違反は罰則や信頼失墜につながりますが、適切なルールと体制を整えれば、画像は院の魅力を伝える強力な武器になります。本記事の内容を参考に、自院の画像利用ルールを見直し、法令遵守と集客効果の両立を図りましょう。
関連:鍼灸の基礎知識:日本鍼灸の進化と現代医療における役割
関連:鍼灸師のための開業手続き完全ガイド|保健所・税務署への申請方法