五十肩を鍼灸で改善|肩の痛みや可動域の制限を緩和するツボ

1. 五十肩に対する鍼灸治療の概要

五十肩肩関節周囲炎)は、肩関節の周りの組織が硬くなり、炎症を起こすことで、肩の痛みや可動域の制限が起こる症状です。40~60代の年齢層に多く見られ、肩を上げる、後ろに回す、日常的な動作が困難になることが特徴です。初期の強い痛みから、徐々に可動域の制限が強くなる中期、その後の慢性期を経て症状が改善しますが、数か月から1年以上症状が続くことがあります。

鍼灸治療は、肩の痛みを軽減し、血流を促進することで、肩の可動域を改善する効果が期待されます。炎症を抑えるだけでなく、筋肉や腱、靭帯などの硬くなった組織を柔軟にする働きもあります。鍼灸は、自然治癒力を高め、薬に頼らずに症状を改善する補完療法として注目されています。


2. 鍼灸が五十肩に効果的な理由

五十肩は、肩周囲の組織に炎症が生じることが原因で起こります。鍼灸治療は、肩の炎症や筋肉の緊張を緩和し、血行を促進することで症状の改善をサポートします。以下のような効果が期待できます。

  • 痛みの緩和
    鍼灸は、体内のエンドルフィンやセロトニンといった天然の鎮痛物質を分泌させ、痛みを和らげます。急性期や慢性期の痛みを軽減し、肩の可動域が改善されることで、日常の動作が楽になります。
  • 血流の促進
    鍼灸によって血流が促進されることで、炎症を起こしている組織に酸素や栄養が行き渡り、回復が早まります。特に、五十肩のように血行不良による硬直や痛みが伴う症状には効果的です。
  • 筋肉と靭帯の柔軟性向上
    五十肩の特徴的な症状である「肩のこわばり」や「動かしにくさ」は、筋肉や靭帯が硬くなることで引き起こされます。鍼灸は、これらの組織を柔らかくし、可動域の制限を改善します。

3. 五十肩に効く主要なツボ

鍼灸治療で使用されるツボは、肩の痛みを軽減し、可動域を広げる効果があります。以下に、五十肩の症状改善に役立つ主要なツボを紹介します。

  • 肩髃(けんぐう)
    肩の外側に位置するツボで、肩の痛みやこわばりを緩和する効果があります。五十肩で肩を上げにくい症状に対して、動きやすさを取り戻す働きがあります。
  • 肩髎(けんりょう)
    肩甲骨の上部にあるツボで、肩関節周囲の血行を促進し、筋肉の緊張を緩めます。五十肩の硬さや痛みに対して効果的です。
  • 天宗(てんそう)
    肩甲骨の中央に位置し、肩甲骨周りの筋肉のこわばりを和らげます。肩関節の可動域を広げる効果があり、特に腕を後ろに回す動作が難しい場合に有効です。
  • 合谷(ごうこく)
    手の親指と人差し指の間にあるツボで、肩だけでなく全身の気の巡りを整え、痛みを軽減します。五十肩の痛みやこわばりが強い場合に効果的です。

4. 鍼灸と生活習慣の改善で相乗効果を得る

鍼灸治療に加え、生活習慣の改善を取り入れることで、五十肩の回復がさらに早まります。以下の改善策を実践し、鍼灸治療との相乗効果を狙いましょう。

  • 肩を冷やさない
    冷えは五十肩の症状を悪化させることがあります。肩周りを温かく保ち、血流を促進するために温湿布を使ったり、ホットパックで肩を温めたりすることが有効です。
  • 軽いストレッチを取り入れる
    五十肩の症状が落ち着いてきたら、軽いストレッチを取り入れましょう。肩を動かす範囲を少しずつ広げることで、筋肉や関節が柔らかくなり、可動域が改善します。無理をせず、痛みを感じたら中断してください。
  • 正しい姿勢を保つ
    姿勢の悪さは肩に負担をかける原因となります。デスクワークや日常の作業では、背筋を伸ばし、肩に力を入れずリラックスした姿勢を心がけることで、症状の悪化を防ぎます。

5. 自宅でできるセルフケア

鍼灸治療と並行して、自宅でも簡単にできるセルフケアを実践することで、五十肩の症状緩和を促進できます。以下のケア法を取り入れてみましょう。

  • ツボ押し
    「肩髃」や「天宗」など、鍼灸で使用されるツボを自分でも指圧することができます。肩周辺のツボを軽く押して5秒ほどキープし、ゆっくりと離す動作を繰り返します。痛みが出ない程度に、優しく行ってください。
  • 温熱療法
    お灸などで温めることは、筋肉の緊張を和らげ、血流を改善します。お風呂で温まりながら肩を軽く動かすのも効果的ですし、ホットパックを使って肩周りを温めることも推奨されます。
  • ストレッチとエクササイズ
    肩の可動域を徐々に広げるために、軽いストレッチを毎日行いましょう。腕を前後に振ったり、肩をゆっくり回す運動を行うことで、肩の動きが少しずつ楽になります。

まとめ

五十肩は、肩の痛みと可動域の制限が特徴的な症状ですが、鍼灸治療を通じて、筋肉や関節の柔軟性を高め、血行を促進することで、自然に症状を改善することができます。痛みを軽減するだけでなく、肩の動きを取り戻す効果が期待され、生活の質が向上します。また、セルフケアや生活習慣の改善を組み合わせることで、鍼灸の効果がさらに高まります。五十肩の症状が長引く場合や、痛みが強い場合は、医師や鍼灸師に相談して、適切な治療を進めることが大切です。

開業鍼灸師のためのお役立ちメディア「カルテラス」へのリンク
鍼灸柔整キャリアラボへのリンク
鍼灸関連学会・セミナー・イベント
鍼灸師・あんまマッサージ指圧師・柔道整復師を目指す全国養成校 大学・専門学校一覧のバナーリンク

この記事を書いた人

アバター

日本鍼灸大学

日本鍼灸大学は「世間と鍼灸を学問する」をコンセプトに有志の鍼灸師とセイリン株式会社が立ち上げたWebとYouTubeチャンネルです。普段、世間話と鍼灸学のお話しを井戸端会議的に気軽に楽しめる内容に仕立て日本鍼灸の奥深さを鍼灸学生に向けて提供します。
※当サイトは学校教育法に則った大学施設ではありません。文部科学省の指導の元、名称を使用しています。

2023年より鍼灸柔整キャリアラボを試験的にスタート!鍼灸柔整キャリアラボは『詳細はこちら』ボタンからアクセス。