エンケファリンは、脳や脊髄などで働く内因性オピオイドペプチドの一種です。体内で作られる物質で、神経の情報伝達や痛みの感じ方に関わることが知られています。
「自然の鎮痛物質」と説明されることがありますが、エンケファリンを増やせば痛みやストレスが必ず改善する、という意味ではありません。痛みや心身の不調には多くの原因があるため、症状が続く場合は医療機関で原因を確認することが大切です。
エンケファリンとは?
エンケファリンは、体内で作られるオピオイドペプチドの一つです。神経細胞などで作られ、オピオイド受容体と結び付くことで、神経の情報伝達を調整します。
代表的なものには、次の2種類があります。
- メチオニン・エンケファリン
- ロイシン・エンケファリン
どちらも小さなペプチドで、前駆体であるプロエンケファリンから作られます。脳、脊髄、末梢神経系などに分布し、神経系のさまざまな働きに関わっています。
痛みとの関係
痛みは、けがや炎症などの情報が神経を通って脳に伝わり、脳がその情報を受け取ることで感じます。エンケファリンを含む内因性オピオイドは、この痛みの情報伝達を調整する仕組みの一部です。
ただし、エンケファリンは「痛みを消す物質」ではありません。痛みの感じ方には、けが、炎症、神経の障害、睡眠不足、心理的な負担など、多くの要素が関わります。
痛みがある場合は、エンケファリンだけに注目するのではなく、痛みの原因を診断し、必要な治療を受けることが重要です。
エンドルフィンとの違い
エンケファリンとエンドルフィンは、どちらも内因性オピオイドに分類される物質です。ほかにもダイノルフィンなどがあり、複数の物質と受容体が関わり合って神経系の働きを調整しています。
| 名称 | 分類 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| エンケファリン | 内因性オピオイドペプチド | 神経伝達や痛みの調整に関わる |
| エンドルフィン | 内因性オピオイドペプチド | 運動、痛み、ストレス反応などとの関係が研究されている |
| ダイノルフィン | 内因性オピオイドペプチド | 痛み、情動、ストレス反応などとの関係が研究されている |
これらは似た働きを持つ部分がある一方で、作られる場所や結び付きやすい受容体、働き方には違いがあります。
ストレスや気分との関係
内因性オピオイドの仕組みは、痛みだけでなく、ストレス反応、感情、報酬、睡眠などとの関係も研究されています。
しかし、「エンケファリンが少ないから気分が落ち込む」「エンケファリンを増やせば不安やうつが治る」といった単純な説明はできません。こころの不調には、生活環境、身体疾患、睡眠、薬の影響なども含めて、多面的な確認が必要です。
「エンケファリンを増やす方法」はある?
日常生活でエンケファリンの量を測定し、「増えた」と確認する方法は一般的ではありません。また、特定の運動、食事、ツボ押し、鍼灸によって、誰でもエンケファリンが増えて症状が改善すると断定することはできません。
適度な運動、十分な睡眠、休息、人との交流などは、健康維持やストレス対策として役立つ場合があります。しかし、その効果をエンケファリンだけで説明することはできません。
生活習慣を整える際は、「エンケファリンを増やすこと」自体を目的にするのではなく、続けやすい運動、休養、食事、相談先を整えることを大切にしましょう。
鍼灸との関係
鍼刺激と内因性オピオイドの関係は研究されています。ただし、鍼灸を受ければエンケファリンが増え、特定の痛みやストレスが必ず改善するとまではいえません。
鍼灸を検討する場合は、痛みや不調の原因を確認したうえで、医療機関での治療を中断せず、鍼灸師に症状、診断、服薬、治療内容を伝えてください。
受診を優先したい症状
次のような場合は、生活習慣の見直しや鍼灸を試す前に、医療機関への相談を優先してください。
- 突然起こった強い痛み、急速に悪化する痛み
- 手足の麻痺やしびれ、ろれつが回らない、見えにくいなどを伴う症状
- 発熱、体重減少、息苦しさ、胸痛を伴う症状
- 眠れないほどの痛みが続く場合
- 気分の落ち込み、不安、不眠が続き、生活に支障が出ている場合
- 自分を傷つけたい気持ちがある、または安全を保てないと感じる場合
よくある質問
エンケファリンは薬ですか?
いいえ。エンケファリンは、体内で作られるペプチドです。医療機関で日常的に測定したり、サプリメントで補ったりするものではありません。
エンケファリンとモルヒネは同じですか?
同じではありません。モルヒネは医薬品に使われる外から投与するオピオイドです。エンケファリンは体内で作られる内因性オピオイドペプチドです。
痛みがあるとき、エンケファリンを意識すればよいですか?
痛みの原因を調べることが優先です。特に強い痛み、突然の痛み、長引く痛みは、自己判断せず医療機関へ相談してください。
まとめ
エンケファリンは、体内で作られる内因性オピオイドペプチドの一つで、神経の情報伝達や痛みの感じ方に関わっています。
一方で、エンケファリンを増やせば病気や不調が改善する、と単純に考えることはできません。痛みやストレスが続く場合は、症状の原因を確認し、必要に応じて医療機関へ相談しましょう。






