アルコール中毒とは何か
アルコール中毒とは、アルコールの摂取が原因となり、身体的・精神的・社会的な問題が生じている状態を指します。現在の医学では「アルコール使用障害(Alcohol Use Disorder:AUD)」という診断名が用いられ、単なる飲酒量の多さではなく、「コントロールできない飲酒行動」が本質とされています。本人の意志や性格の問題と誤解されがちですが、実際には脳内の報酬系や神経伝達の変化が関与する疾患です。そのため、根性論や自己管理だけでの改善は難しく、適切な医療的・社会的支援が重要になります。
アルコール中毒の種類
アルコール中毒は、大きく「急性アルコール中毒」と「慢性アルコール中毒(アルコール使用障害)」に分けられます。急性アルコール中毒は、短時間で大量のアルコールを摂取した際に起こり、意識障害や呼吸抑制、低体温などを引き起こします。一方、慢性アルコール中毒は、長期間にわたり飲酒を続けることで形成され、飲酒が生活の中心となり、健康や人間関係に悪影響が出ていても飲酒をやめられない状態です。両者は異なる病態ですが、繰り返すことで重なり合うケースも少なくありません。
アルコールが体に与える影響
アルコールは体内に入ると、主に肝臓で分解されます。エタノールはまずアセトアルデヒドに変換され、さらに酢酸へと分解されますが、このアセトアルデヒドは非常に毒性が強く、顔の紅潮、動悸、吐き気、頭痛などの原因となります。分解能力には個人差があり、遺伝的に酵素活性が弱い人では少量の飲酒でも強い症状が出やすくなります。長期的な多量飲酒は肝臓への負担を増大させ、脂肪肝や肝炎、肝硬変へと進行するリスクを高めます。
脳と神経への影響
アルコールは中枢神経系に作用し、脳の働きを一時的に抑制します。その結果、判断力や注意力が低下し、感情のコントロールが難しくなります。長期間にわたる飲酒では、記憶障害や集中力低下が目立つようになり、日常生活や仕事に支障をきたすこともあります。また、脳内の報酬系がアルコールによって過剰に刺激されることで、「飲酒しないと落ち着かない」「不安が強くなる」といった依存状態が形成されます。これがアルコール使用障害の中核的な問題です。
アルコール使用障害の診断基準
アルコール使用障害の診断には、米国精神医学会が定めたDSM-5の基準が広く用いられています。そこでは、飲酒量を減らせない、飲酒に多くの時間を費やす、飲酒によって仕事や家庭に問題が生じている、飲まないと手の震えや不安が出るといった項目が評価されます。これらの症状が一定数以上認められる場合に診断され、該当項目数によって軽度・中等度・重度に分類されます。早期の段階で気づき、専門家に相談することが重症化を防ぐ鍵となります。
アルコール中毒による主な健康リスク
長期間の過剰飲酒は、全身のさまざまな臓器に影響を及ぼします。肝臓疾患だけでなく、高血圧や心疾患、膵炎、消化管障害のリスクが高まることが知られています。また、口腔、咽頭、食道、肝臓などのがんとの関連も指摘されています。これらの健康リスクは、飲酒量と飲酒期間に比例して高まる傾向があります。自覚症状が少ないまま進行するケースも多いため、「問題が起きてから」ではなく、日常的な飲酒習慣の見直しが重要です。
離脱症状について知っておくべきこと
アルコール依存状態にある人が急に飲酒を中断すると、離脱症状が現れることがあります。軽度では手の震え、不安感、発汗、不眠などがみられますが、重症になると幻覚やけいれん、意識障害を伴うこともあります。これらは命に関わる可能性があるため、自己判断での断酒は避け、医療機関の管理下で行うことが重要です。離脱症状は「飲酒をやめた証拠」でもあり、適切な治療につなげる重要なサインともいえます。
治療と支援の考え方
アルコール使用障害の治療は、単にお酒をやめることだけが目的ではありません。医療機関での診察、カウンセリング、必要に応じた薬物療法、支援グループの活用などを組み合わせ、生活全体を整えていくことが重視されます。近年では、本人の状態や生活背景に合わせた柔軟な支援が行われるようになってきました。家族や周囲の理解も治療の継続には欠かせない要素であり、孤立させないことが回復への大きな支えとなります。
予防と適切な飲酒の目安
日本では「節度ある適度な飲酒」として、1日あたり純アルコール量20g程度が一つの目安とされています。ただし、これはあくまで参考値であり、すべての人にとって安全な量ではありません。空腹時を避ける、水分を十分にとる、休肝日を設けるなどの工夫が重要です。また、ストレス解消を飲酒だけに頼らないことも、依存予防の観点から大切です。日々の小さな意識の積み重ねが、長期的な健康を守ります。
まとめ
アルコール中毒(アルコール使用障害)は、特別な人だけの問題ではなく、誰にでも起こり得る身近な疾患です。正しい知識を持つことで、早期の気づきや重症化の予防、適切な支援につながります。お酒を完全に否定するのではなく、自分の体と心の状態を理解しながら、無理のない付き合い方を選ぶことが大切です。飲酒習慣を見直すことは、将来の健康への投資ともいえるでしょう。
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