正月太りは太ったわけではない?東洋医学と鍼灸で考える「溜める身体」の正体

正月太りとは何か?まず一般的な理解を整理する

正月太りは太ったわけではない?東洋医学と鍼灸で考える「溜める身体」の正体をイメージした図

正月太りという言葉は、多くの場合「年末年始に食べすぎて体重が増えた」「運動不足が原因で太った」という意味で使われます。確かに、普段より食事量が増え、活動量が減ることは事実でしょう。しかし、正月太りの多くは短期間で起こり、生活リズムが戻ると自然に体重も戻るケースが少なくありません。この点を考えると、正月太りは一般的にイメージされる「肥満」とは性質が異なる可能性があります。体脂肪が増えた結果というより、身体の状態が一時的に変化していると捉える方が実態に近い場合も多いのです。


短期間で増える体重の特徴

正月太りの特徴として、数日から1週間ほどで体重が増えることが挙げられます。また、体重増加と同時に「顔や脚がむくむ」「身体が重だるい」「胃腸がすっきりしない」といった感覚を伴う人も多いでしょう。これらの変化は、長期間にわたって少しずつ増えていく肥満とは異なります。体内の水分バランスや循環の変化によって、一時的に体重が増えている可能性も考えられます。このような視点は、東洋医学の考え方と非常に相性が良いものです。


東洋医学から見た正月太りの基本的な考え方

東洋医学では、体重の増減を単純にカロリーや脂肪量だけで評価しません。身体は「気(エネルギー)」「血(栄養や循環)」「水(体液)」といった要素が巡ることで保たれていると考えられています。正月太りは、これらの巡りが一時的に滞り、体内に「溜まり」が生じている状態と捉えることができます。つまり、身体そのものが変わったのではなく、流れが変化した結果として体重に表れているという考え方です。


正月太りは「溜める」という身体の選択

東洋医学では、冬はエネルギーを外に発散する季節ではなく、内側に蓄える季節とされてきました。寒さから身を守り、生命活動を維持するために、身体は自然と消費を抑え、溜め込む方向に働きます。正月はこの流れが最も強く現れる時期です。そのため、食事量が増えたり、動く量が減ったりする中で体重が増えるのは、身体が「今は溜める時期だ」と判断した結果とも考えられます。これは異常ではなく、季節に沿った反応のひとつです。


なぜ正月に太りやすく感じるのか

冬は気温の低下によって血流が緩やかになり、活動量も自然と減ります。その結果、エネルギー消費が少なくなり、体内の循環も停滞しやすくなります。正月はさらに生活リズムが崩れやすく、起床時間や食事時間が不規則になりがちです。東洋医学では、こうしたリズムの乱れが身体の巡りに影響すると考えます。正月太りは、季節的な要因と生活リズムの変化が重なって起こる、非常に自然な現象と言えるでしょう。


正月太りとむくみ・胃腸不調の関係

正月太りを感じる人の多くが、同時にむくみや胃腸の不調を訴えます。これは脂肪が急激に増えた結果ではなく、体内の水分代謝や消化機能の働き方が一時的に変化している可能性があります。東洋医学では、胃腸は常に全力で働くものではなく、休む時期も必要だと考えます。正月に胃が重く感じたり、便通が乱れたりするのは、胃腸が弱ったのではなく「今は回復を優先している」状態とも解釈できます。


正月明けにやる気が出ない理由

正月明けに「やる気が出ない」「体が重い」「眠気が強い」と感じる人は少なくありません。これを精神的な問題や怠けと捉えてしまうと、身体の自然な反応を見落としてしまいます。東洋医学では、活動の後には必ず休息が必要だと考えます。一年を通して外向きに使われてきたエネルギーが、正月に内側へ戻ることで、回復が進みます。その過程で現れるのが、だるさや眠気であり、これもまた正月太りと同じ流れの中にある反応です。


正月太りとの上手な付き合い方

正月太りを感じたとき、多くの人が「すぐに戻さなければ」と焦ります。しかし、東洋医学的には急激な運動や極端な食事制限は、かえって身体の巡りを乱すことがあります。大切なのは、体重そのものよりも生活リズムを整えることです。起床時間を少しずつ戻し、軽く身体を動かし、温かい食事を意識する。こうした積み重ねによって、身体の流れは自然と元に戻っていきます。鍼灸の考え方も、この「自然な回復を助ける」という点にあります。


鍼灸師は正月太りをどう説明するか?を考えてみた

鍼灸を学ぶ立場として、正月太りを単なる生活習慣の問題として説明してしまうと、東洋医学の視点が十分に伝わりません。重要なのは、なぜこの時期に溜まりやすいのかを、季節性と身体の反応として整理することです。冬の終わりは、陰が極まり、次の季節である春へ向かう準備期間でもあります。正月太りは、その移行期に身体が示す反応のひとつとして捉えることで、患者さんへの説明にも深みが生まれます。


正月太りは「戻す」ものではなく「ほどく」もの

東洋医学では、健康とは常に一定の状態を保つことではなく、揺らぎながら整っていく過程だと考えます。正月太りも、乱れや失敗ではなく、一時的な偏りです。無理に体重だけを戻そうとするのではなく、滞った巡りを少しずつほどいていく。この視点を持つことで、身体との向き合い方が大きく変わります。焦らず、責めず、流れを戻すことが結果的に近道になるのです。


まとめ:正月太りは身体からのメッセージ

正月太りは、自己管理の失敗でも意志の弱さでもありません。それは、一年を生き抜いた身体が、次の季節へ進むためにいったん立ち止まり、溜めるという選択をした結果です。東洋医学や鍼灸に興味を持つことは、体重を減らす方法を知ることではなく、身体のリズムを理解する視点を持つことでもあります。正月太りをきっかけに、「急いで戻す」よりも「ゆっくり整える」という考え方に触れてみてはいかがでしょうか。

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