日本鍼灸大学 
はじめに：鍼灸院とSDGs目標8の関係
SDGs目標8は「働きがいも経済成長も」。
雇用の確保や労働環境の改善、持続可能な経済成長を掲げるこの目標は、大企業だけでなく小規模事業所である鍼灸院にも深く関係しています。
「施術者のやりがい」と「経営の持続可能性」。両方をバランス良く実現することが、これからの鍼灸院に求められる課題です。
鍼灸師の働き方に潜む課題
まずは現状の課題を整理してみましょう。
- 長時間労働：施術に加え、受付・清掃・経営管理を兼任するケースが多い
- 収入の不安定さ：保険診療の制約や自費診療の集客次第で差が出やすい
- キャリアの選択肢不足：臨床以外のキャリアパスが見えにくい
- 孤独な経営：個人院では相談相手が少なく、働きがいを感じにくいことも
これらの課題を解決し、持続可能な働き方を作ることは、まさにSDGs目標8の実践につながります。
働きがいを高めるための取り組み
鍼灸師がやりがいを持ち、安心して働けるためにできる工夫を挙げます。
- 柔軟な勤務体制
週休2日やシフト制、副業容認などを取り入れれば、多様な働き方が可能になります。特に子育て世代の鍼灸師にとっては大きな支援です。 - キャリア教育と学び直し
勉強会や外部セミナーへの参加支援は、技術向上だけでなく働きがいにつながります。スタッフに「成長している実感」を持たせることが重要です。 - チーム医療への参画
医師・理学療法士・介護職などと連携し、地域包括ケアに参加することで、「社会に必要とされている」というモチベーションを得られます。 - 院内コミュニケーションの改善
小規模院ほど人間関係が濃くなります。定期的なミーティングや意見交換の場をつくり、スタッフの声を反映させると、職場への愛着が強まります。
経済成長に貢献する鍼灸院の姿
SDGs目標8は「経済成長」にも言及しています。鍼灸院が地域経済にどう貢献できるのかを考えてみましょう。
- 地域に根ざした雇用創出
受付スタッフやアシスタントを雇用することで、地域の働き口を生み出せます。 - 地域住民の健康維持 → 生産性向上
働き盛り世代の体調改善やストレス緩和は、地域全体の労働力を支えることになります。 - 地元企業とのコラボ
職場向け健康セミナーや福利厚生としての鍼灸導入は、企業にとっても従業員満足度の向上に役立ちます。 - 観光資源としての鍼灸
インバウンド需要が回復する中、「日本の伝統医療体験」として鍼灸を打ち出せば地域経済活性化にも貢献できます。
実践事例：鍼灸院の働き方改革
- A院（都市部）
スタッフに週休2日制を導入し、残業を減らした結果、離職率が低下。求人応募数も増加。 - B院（地方）
地域の企業と提携し「職場での出張鍼灸サービス」を提供。新しい収益源となり、経営が安定化。 - C院（女性院長）
子育て世代の女性スタッフ向けに短時間勤務制度を導入。育児と仕事の両立が可能になり、定着率が向上。
こうした事例は、小さな鍼灸院でもSDGsを実践できることを示しています。
これからの鍼灸院に必要な視点
- 「スタッフの幸せ」＝「患者の満足度」
施術者がやりがいを持てなければ、患者にも良いケアは届きません。 - デジタル化による効率化
予約システムや電子カルテを導入することで事務作業を減らし、施術や教育に集中できる時間を確保。 - 地域とのパートナーシップ
病院や介護施設、企業、自治体と連携することで、鍼灸師の働き方が多様化し、地域経済にも貢献。
まとめ：鍼灸師の働きがいが地域の未来を変える
SDGs目標8「働きがいも経済成長も」は、鍼灸院の働き方改革と地域経済への貢献そのものです。
- スタッフがやりがいを持てる労働環境の整備
- 雇用創出や地域経済への波及効果
- チーム医療や企業との連携による新しい働き方
- デジタル化や柔軟な勤務体制での効率化
鍼灸院が働きがいを重視することは、患者の満足度を高め、経営の安定化につながります。そして地域社会や経済の活性化にもつながるのです。
「働きがいのある鍼灸院」を実現することこそ、SDGs時代の経営に不可欠なテーマといえるでしょう。
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