SDGs目標5「ジェンダー平等」×女性の健康を支える鍼灸

はじめに:ジェンダー平等と健康のつながり

SDGs目標5は「ジェンダー平等を実現し、すべての女性と女児の能力を強化する」ことを掲げています。
一般的には教育や就労の格差是正が注目されますが、実は「女性の健康課題に対する支援」も大きなテーマです。

月経、妊娠・出産、更年期など、女性は一生を通じて身体の変化と向き合います。社会で活躍するためには、健康面での支援が欠かせません。ここで鍼灸は、自然で副作用の少ないケア方法として大きな役割を果たせます。


女性のライフステージと健康課題

女性の体はライフステージごとに大きく変化します。そのたびに心身の不調が起きやすくなります。

  1. 思春期〜成人期
     月経痛、月経不順、PMS(生理前症候群)など。学業や仕事に支障をきたすケースも少なくありません。
  2. 妊娠・出産期
     つわり、逆子、不妊治療のサポート、産後の体調不良。特に妊活や産後ケアは大きな社会課題になっています。
  3. 更年期
     ホットフラッシュ、不眠、イライラ、肩こりなど。仕事を続ける上で大きな障害になることもあります。
  4. 老年期
     骨粗しょう症、関節痛、尿トラブルなど。閉経後の健康維持も重要です。

これらは「女性だからこそ直面する健康課題」であり、ジェンダー平等を考える際に避けて通れない分野です。


鍼灸が果たせる役割① 月経痛・PMSのケア

多くの女性が悩む月経痛やPMSは、薬での対症療法に頼ることが多いですが、鍼灸は体質改善の一助になります。

  • ツボ刺激による血流改善
  • 自律神経・ホルモンバランスの調整
  • 冷えやストレスの軽減

実際に「薬を飲まなくても生活できる日が増えた」「仕事や勉強に集中できるようになった」という声も少なくありません。これは、女性が学業や仕事を続ける上での支援にもつながります。


鍼灸が果たせる役割② 妊活・妊娠期のサポート

妊活に取り組む女性の中には、「体を整えたい」「ストレスを減らしたい」と鍼灸を選ぶ人が増えています。
血流改善やホルモンバランス調整を目的に、不妊治療の一環として鍼灸を取り入れるケースは国内外で報告されています。

妊娠期には、つわり緩和や逆子治療なども有名です。逆子治療では「至陰」という足の小指にあるツボを温灸で刺激する方法が広く行われています。

さらに、産後の腰痛・腱鞘炎・母乳分泌の悩みなど、出産後の女性をサポートできるのも大きな強みです。「産後の回復を支えるケア」は、母親だけでなく家族全体の幸せにも直結します。


鍼灸が果たせる役割③ 更年期ケア

更年期障害は、仕事や社会生活の継続に大きく影響する問題です。
鍼灸は以下のような症状に対応できます。

  • ホットフラッシュ(のぼせ・発汗)
  • 睡眠障害
  • 倦怠感・イライラ
  • 頭痛や肩こり

患者さんからは「薬に頼りたくない」「副作用が心配」という声が多く聞かれます。そのニーズに応えられるのが鍼灸の魅力です。WHO(世界保健機関)も、鍼灸は更年期障害の補完療法として有効性があると報告しています。


鍼灸が果たせる役割④ 老年期の女性を支える

閉経後は骨粗しょう症や関節痛、泌尿器系の不調が増えます。これらは「健康寿命」を縮める要因です。
鍼灸は慢性的な痛みの緩和や、体力維持のサポートに役立ち、シニア女性の社会参加を後押しします。


鍼灸院でできる女性支援の工夫

実際の鍼灸院で取り組める工夫を紹介します。

  • 女性専用・女性優先の時間帯を設ける
  • 妊活・産後ケアプログラムを用意する
  • 院内に女性の体に関する情報掲示を行う
  • SNSで女性のセルフケア情報を発信する
  • 助産師や婦人科医とのネットワークを築く

こうした取り組みは「安心して通える環境づくり」となり、SDGs目標5の実現にも貢献します。


世界の視点から見た「女性と鍼灸」

WHOは「伝統医療は女性の健康支援に有効」と明言しており、鍼灸はその代表例として国際的に注目されています。
欧米では不妊治療クリニックや更年期外来で鍼灸を導入する例が増えています。イギリスのNHS(国民保健サービス)では鍼灸が疼痛緩和の治療として正式に認められており、女性特有の症状への活用も進んでいます。

日本でもこうした世界的動向を踏まえ、鍼灸が女性の健康支援にどう役立てるかを広く発信することが重要です。


女性の健康支援=社会の成長につながる

女性が健康に過ごせることは、個人の幸福にとどまらず、社会全体の成長に直結します。

  • 学業や仕事を継続できる
  • 出産・育児を安心して迎えられる
  • キャリア中断を防げる
  • 高齢期も活発に社会参加できる

つまり「女性の健康を守ること」は「社会を持続可能にすること」と同義です。鍼灸師が果たす役割は「体のケア」にとどまらず、「社会基盤を支える活動」といえるのです。


まとめ:鍼灸はジェンダー平等を支える医療

SDGs目標5「ジェンダー平等を実現しよう」は教育や雇用だけでなく、「女性の健康支援」も含まれます。

  • 月経痛やPMSへのケア
  • 妊活・妊娠・産後のサポート
  • 更年期障害の緩和
  • 老年期の健康維持
  • 安心して通える環境づくり

これらはすべて、鍼灸師が日常業務で取り組める活動です。
女性が健康に過ごせることは、社会全体の活力を支える基盤となります。

鍼灸はジェンダー平等の実現において、大きな可能性を秘めた存在なのです。

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