はじめに:廃棄方法の誤りは、院の信用と法令順守に直結
鍼やガーゼなど、血液や体液が付着した廃棄物は感染性廃棄物として扱われます。
廃棄方法を誤れば、感染症の拡大リスク・廃棄物処理法違反・罰則の可能性があります。
また、患者や地域住民に不安を与え、院の信用低下にもつながります。
本記事では、鍼灸院で発生する感染性廃棄物の正しい区分方法、保管・処理手順、委託契約の進め方を、厚生労働省の指針に基づいて解説します。
要点まとめ
- 感染性廃棄物=血液や体液が付着した器具・ガーゼ・鍼など
- 黄色容器・赤色容器など専用容器での分別保管が必須
- 院内処理ではなく、許可業者への委託が原則
- 委託契約書は必ず書面で締結し、マニフェストを保管
- 廃棄量や保管状況は記録として残すことが法令順守の鍵
1. 感染性廃棄物とは?
厚生労働省の「感染性廃棄物処理マニュアル」では、次のいずれかに該当する廃棄物を感染性と定義しています。
- 血液や体液が付着したガーゼ、脱脂綿
- 使用済みの鍼(ディスポーザブル含む)
- 血液・体液に汚染された手袋、マスク
- 感染症患者に使用した器具類
2. 分別と保管方法
✅ 分別の基本
廃棄物の種類 | 容器の色 | 備考 |
---|---|---|
鋭利物(鍼、注射針) | 黄色 | 破損防止構造、耐貫通性容器 |
血液付着ガーゼ等 | 赤色 | 密閉可能な袋・容器 |
感染性プラスチック類 | 赤色 | 滅菌前でも分別必須 |
✅ 保管時の注意点
- 容器は施術室内の手の届く範囲に設置しない(転倒・破損防止)
- 一定量たまったら速やかに封をする
- 保管場所は施錠可能かつ換気の良い場所を選ぶ
- 廃棄日・量を記録簿に残す
3. 処理方法と委託契約
✅ 院内処理は不可
鍼灸院が自ら感染性廃棄物を焼却・処理することはできません。
廃棄物処理法に基づく許可業者へ委託する必要があります。
✅ 委託契約の流れ
- 地域の許可業者リストを保健所で確認
- 処理料金・回収頻度・容器提供の有無を比較
- 書面で契約(廃棄物の種類・数量・回収方法を明記)
- 回収時にマニフェスト(産業廃棄物管理票)を発行・保存(5年間)
4. 院内運用チェックリスト
チェック項目 | OK/NG | 備考 |
---|---|---|
鍼・ガーゼを専用容器に分別しているか | □ OK □ NG | 容器色・構造を守る |
容器の封は規定量で速やかに行っているか | □ OK □ NG | 満杯放置はNG |
保管場所は施錠・換気が可能か | □ OK □ NG | 安全管理の基本 |
許可業者と書面契約しているか | □ OK □ NG | 契約書に回収方法明記 |
マニフェストを5年間保存しているか | □ OK □ NG | 法定保存期間遵守 |
よくある質問(FAQ)
Q:一般ゴミと一緒に捨ててもいいですか?
A:不可です。感染性廃棄物は必ず許可業者による処理が必要です。
Q:容器はどこで入手できますか?
A:委託業者から提供される場合が多いですが、医療用品卸でも購入可能です。
Q:廃棄の頻度はどのくらいが望ましいですか?
A:感染リスクを下げるため、1〜2か月に1回が推奨されます。
まとめ:感染性廃棄物管理は院の安全と信頼の証
感染性廃棄物の正しい処理は、法令順守だけでなく、患者・スタッフ・地域の安全を守る責任でもあります。
分別・保管・委託契約の流れを明確にし、誰が対応しても同じ品質で処理できるよう院内ルール化しましょう。
さらに、年1回は保管場所や記録簿の見直し、業者との契約内容の更新を行うと安心です。
こうした管理は、患者からの信頼や保健所調査での評価にも直結します。
「きちんと管理できる院」という印象は、長期的な経営の安定にもつながるのです。
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