トリガーポイントの発生メカニズム|筋膜・神経・血流の関係

はじめに|トリガーポイントの発生メカニズムとは?

トリガーポイント(Trigger Point)は、筋肉内にできる「過敏性を持つしこり(硬結)」のことで、慢性的な痛みや関連痛の原因となる。発生メカニズムには、筋膜の緊張、神経の影響、血流の不足 などが関与しており、これらが組み合わさることで痛みが慢性化する。

鍼灸施術では、トリガーポイントの形成過程を理解し、適切なアプローチを行うことが重要。筋膜や神経の影響を考慮しながら、適切な経穴や刺鍼ポイントを選定することで、より効果的な施術が可能となる。本記事では、トリガーポイントの発生メカニズムを解説し、施術に活かすためのポイントを詳述する。


1. 筋膜の緊張とトリガーポイントの形成

筋膜(Fascia)は、筋肉や臓器を包み込み、組織同士をつなぐ役割を持つ結合組織。筋膜は非常に柔軟だが、長時間の同じ姿勢や運動不足、過度なストレス によって硬くなり、トリガーポイントを生じやすくなる。

筋膜の役割

  • 筋肉を適切な位置に保持し、滑らかな動きをサポート
  • 血流や神経伝達をスムーズに行う働き
  • 外部からの衝撃を和らげ、筋肉を保護

筋膜の緊張がトリガーポイントを引き起こす理由

  1. 筋膜が硬くなると、筋肉が自由に動かなくなる。
  2. 筋肉内の血流が阻害され、酸素供給が不足する。
  3. 筋線維の一部が異常収縮し、硬結(しこり)が形成される。

筋膜の癒着や歪みを解消することで、トリガーポイントの改善が期待できる。鍼灸では、経絡の流れを意識しながら筋膜リリースを行うことで、筋肉の柔軟性を取り戻し、痛みの軽減につなげることができる。


2. 神経の影響とトリガーポイントの関係

神経は、脳や脊髄からの指令を筋肉に伝える役割を果たしている。トリガーポイントが形成されると、局所的な神経の興奮が高まり、痛みを増幅させる

神経とトリガーポイントの関係

  • 痛みの過敏化(中枢感作)
    • トリガーポイントが長期間存在すると、脳が痛みを「記憶」し、痛みの感受性が高まる。
  • 自律神経の影響
    • 交感神経が優位になりすぎると、筋緊張が高まり、トリガーポイントが発生しやすくなる。

施術のポイント

神経の過敏化を抑えるためには、トリガーポイントを的確に刺激し、筋弛緩を促すことが重要。また、ツボを利用した刺鍼によって交感神経の過緊張を緩和し、血流を改善することで、痛みの軽減につなげることができる。


3. 血流不足がトリガーポイントを悪化させる

血流は、筋肉に酸素や栄養を運び、老廃物を排出する重要な働きを持つ。トリガーポイントが形成されると、その部位の血流が阻害され、筋肉が酸欠状態に陥る。

血流不足の主な原因

  • 長時間の同じ姿勢(デスクワーク、スマートフォンの使用など)
  • 運動不足による血流低下
  • 筋緊張の持続による血管の圧迫

血流改善のための施術

  • 鍼刺激による局所血流の改善
    • 鍼を刺すことで微細な損傷を与え、血流を促進する「創傷治癒反応」を引き起こす。
  • 温熱療法の併用(お灸やホットパック)
    • お灸や温熱療法を用いることで、局所の血流を増やし、トリガーポイントを解消する。

血流改善を目的とした鍼灸施術を行うことで、トリガーポイントの痛みが軽減し、症状の再発防止にもつながる。


まとめ

トリガーポイントの発生には、筋膜の緊張、神経の過敏化、血流不足 の3つの要因が関与している。これらのメカニズムを理解することで、施術の精度を向上させることができる。

筋膜の癒着を解消し、筋肉の柔軟性を取り戻すことが重要
神経の過敏化を抑え、自律神経のバランスを整える
血流を促進し、筋肉の酸欠状態を改善する

鍼灸施術では、経絡・経穴を活用したアプローチや、局所への適切な刺鍼を組み合わせることで、トリガーポイントの緩和が可能となる。次回は、トリガーポイントの診断法 について詳しく解説する。


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