日本鍼灸大学 
1. 動脈硬化症に対する鍼灸治療の概要
動脈硬化症とは、動脈の内壁にコレステロールやカルシウムなどが蓄積し、血管が硬く狭くなることで、血流が悪化する疾患です。動脈硬化は年齢を重ねるとともに進行し、高血圧、心疾患、脳卒中などのリスクを高める原因となります。症状が進行するにつれて、胸の痛み、足のしびれ、体の冷えなどが現れることがあります。
鍼灸は、動脈硬化症の症状を緩和し、血流を促進する自然な治療法として利用されています。特定のツボを刺激することで体内の「気」の流れを整え、血管の健康をサポートし、血行を改善することが期待されます。薬物治療と併用することで、動脈硬化の進行を抑える効果が高まることも報告されています。
2. 鍼灸が動脈硬化症に効果的な理由
動脈硬化症は血管の硬化や狭窄によって血流が悪くなり、全身の健康に悪影響を及ぼします。鍼灸治療は、以下のような効果を通じて、動脈硬化症の改善に寄与します。
- 血行促進による血管の健康改善
鍼灸は、体内の血流を改善し、血管の弾力を高める効果があります。血液の流れが良くなることで、動脈の内壁に溜まった物質を排出しやすくし、血管の健康維持をサポートします。 - 自律神経のバランスを整える
動脈硬化の進行には、自律神経の乱れが関与していることが多くあります。鍼灸は副交感神経を活性化し、血管の拡張を促進することで、動脈硬化の症状を和らげます。また、ストレスの軽減による血圧の安定化にもつながります。 - 血圧の調整
動脈硬化のリスクの一つである高血圧に対しても、鍼灸は効果があります。特定の経穴（ツボ）を刺激することで、血圧を下げ、心臓や血管にかかる負担を減らします。これにより、動脈硬化の進行を抑制することが期待されます。
3. 動脈硬化症に効く主要なツボ
動脈硬化症に対する鍼灸治療では、血流を改善し、血管の健康を保つための特定のツボを刺激します。以下に、動脈硬化症に効果的な主要なツボを紹介します。
- 足三里（あしさんり）
膝の下に位置するツボで、全身の血流を促進し、消化器系の働きを改善します。動脈硬化の予防や血液循環の改善に役立ちます。 - 合谷（ごうこく）
手の親指と人差し指の間にあるツボで、全身の気の巡りを整え、血圧の安定化に効果があります。動脈硬化の進行を抑えるために、ストレス軽減にも役立つツボです。 - 内関（ないかん）
手首の内側に位置するツボで、心臓の働きをサポートし、血行を改善する効果があります。特に、胸の圧迫感やストレスが原因の症状に効果的です。 - 太衝（たいしょう）
足の親指と人差し指の間にあるツボで、肝機能を整えることで、血流を良くし、動脈硬化の原因となる血中の余分な脂質の排出を促します。
4. 鍼灸と生活習慣の改善で相乗効果を得る
鍼灸治療に加えて、日常生活の習慣を改善することで、動脈硬化症の症状緩和がさらに進みます。以下の習慣を実践することで、鍼灸治療の効果を高めましょう。
- 適切な食事を心がける
動脈硬化の改善には、食生活が非常に重要です。高脂肪、高コレステロールの食品を避け、野菜、果物、オメガ3脂肪酸を豊富に含む魚を積極的に摂取することで、血管の健康が保たれます。 - 適度な運動を行う
ウォーキングや軽いジョギングなどの有酸素運動を日常に取り入れることで、血流が改善され、血管が柔軟になります。運動はストレス軽減にも役立ち、自律神経のバランスを整えます。 - ストレス管理
ストレスは血管に悪影響を与え、動脈硬化を悪化させる要因となります。鍼灸と併用して、瞑想や深呼吸、趣味の時間を持つなど、リラックスする時間を確保することが大切です。
5. 自宅でできるセルフケア
鍼灸治療と併せて、自宅でできるセルフケアを取り入れることで、動脈硬化の症状をさらに改善できます。以下のセルフケアを試してみましょう。
- ツボ押し
「足三里」や「合谷」などのツボを軽く指で押し、5秒ほどキープしてからゆっくり離す動作を繰り返します。これにより、血行が改善され、血管の健康維持がサポートされます。 - お灸など温熱療法
お灸をすえるなど温熱療法で血流を促進するために、足湯や温湿布を使用して体を温めるのが効果的です。体を温めることで、血管が拡張し、血液の流れが良くなります。 - 深呼吸とリラックス法
深呼吸を行うことで副交感神経が活性化し、血圧が下がり、リラックス効果を得ることができます。静かな場所でゆっくりとした深呼吸を数分間行うことで、心身の安定が得られます。
まとめ
動脈硬化症は、血管が硬く狭くなることで血流が悪化し、さまざまな健康リスクを引き起こす疾患ですが、鍼灸治療によって自然に症状を改善することが期待されます。鍼灸は、血流を促進し、自律神経を整えることで、動脈硬化の進行を抑えることができます。また、セルフケアや生活習慣の改善を組み合わせることで、鍼灸治療の効果がさらに高まり、血管の健康維持に役立ちます。動脈硬化の症状が進行する前に、医師や鍼灸師に相談しながら適切なケアを行うことが大切です。
