しびれに対する鍼灸のアプローチ|症状の緩和と原因別の施術

はじめに

「しびれ」は、日常生活で多くの人が経験する症状ですが、その原因は多岐にわたり、神経系、血流、筋肉、関節などさまざまな要因が絡んでいます。特に、慢性的なしびれは放置すると生活の質を大きく低下させる可能性があります。

鍼灸は、経絡(けいらく)経穴(ツボ)を活用して、神経や血流の改善を図ることで、しびれの緩和に効果的です。また、全身のバランスを整えることで、根本的な原因に働きかける治療法として注目されています。


しびれの主な原因

1. 神経の圧迫や損傷

  • 頚椎症や腰椎椎間板ヘルニア
    神経が圧迫されることで、手や足に放散するしびれが生じます。
  • 坐骨神経痛
    坐骨神経の炎症や圧迫により、臀部から下肢にかけてのしびれが発生します。

2. 血流障害

  • 末梢循環不良
    冷えや血行不良が原因で、指先や足先にしびれが現れることがあります。
  • 糖尿病性神経障害
    糖尿病による血管障害が原因で、しびれが起こる場合があります。

3. 筋肉や筋膜の緊張

  • 筋肉が硬直すると、神経や血管を圧迫し、しびれを引き起こします。特に**筋筋膜性疼痛症候群(MPS)**は原因の一つとして挙げられます。

4. その他の要因

  • 自律神経失調症
    自律神経の乱れにより、末端の血流が滞ることがあります。
  • ビタミン不足
    ビタミンB群の不足が神経機能を低下させる場合があります。

鍼灸がしびれに有効な理由

鍼灸治療は、神経や血流の改善を通じて、しびれを緩和する自然療法です。具体的には次のような効果が期待できます:

1. 神経機能の改善

鍼による刺激が、神経の過敏状態を正常化し、痛みやしびれを軽減します。

2. 血流促進

ツボへの刺激により血行が改善され、末端組織への酸素や栄養の供給が増加します。

3. 筋肉の緊張緩和

硬直した筋肉をほぐし、神経や血管への圧迫を軽減します。

4. 自律神経の調整

鍼灸は自律神経のバランスを整えるため、血管の拡張や筋肉の弛緩を促進します。


しびれに効果的なツボ

症状の原因や部位に応じて、以下のツボを活用します:

1. 手や腕のしびれ

  • 合谷(ごうこく):手の甲、親指と人差し指の間
    • 効果:手の血流を促進し、神経のバランスを整えます。
  • 内関(ないかん):手首の内側、手のひら側の腱の間
    • 効果:腕のしびれや血行不良を改善します。

2. 足のしびれ

  • 足三里(あしさんり):膝下、外側にあるツボ
    • 効果:下肢全体の血流改善と神経機能の調整に有効です。
  • 承山(しょうざん):ふくらはぎ中央部
    • 効果:坐骨神経痛やふくらはぎの張りによるしびれを緩和します。

3. 全身のしびれや神経痛

  • 大椎(だいつい):首の後ろ、第7頚椎の下
    • 効果:全身の気血を巡らせ、血流不良や自律神経の乱れを整えます。
  • 百会(ひゃくえ):頭頂部の中央
    • 効果:ストレスや自律神経の乱れからくるしびれを改善します。

鍼灸施術の具体的アプローチ

1. 原因別の施術

  • 神経圧迫が原因の場合
    腰椎や頚椎周辺のツボ(腎兪、天柱など)を刺激し、神経の圧迫を軽減します。
  • 血流障害が原因の場合
    足三里や合谷など、血行促進効果のあるツボを用います。
  • 筋肉の緊張が原因の場合
    硬直した筋肉をターゲットに施術し、神経や血管の負担を軽減します。

2. 全身調整によるバランス回復

局所的な治療に加えて、全身の経絡を調整することで、体全体のエネルギー(気血)の流れを整えます。

3. 温灸や吸い玉の併用

冷えによる血行不良が原因の場合は、温灸を用いて患部を温めます。また、吸い玉で筋肉の緊張を緩和し、血流を促進します。


セルフケアの提案

1. ストレッチ

しびれが起きやすい部位(肩、腕、ふくらはぎ)を優しく伸ばし、筋肉の緊張を和らげましょう。

2. 温めるケア

お風呂や温湿布で患部を温め、血行を良くすることで症状の軽減が期待できます。

3. 生活習慣の見直し

適度な運動やバランスの取れた食事を心がけ、ビタミンB群を多く含む食品(卵、魚介類、豆類など)を積極的に摂取しましょう。


まとめ

しびれは、神経や血流、筋肉のトラブルが複合的に絡み合う症状ですが、鍼灸はこれらに多角的にアプローチできる治療法です。原因に応じたツボへの刺激と全身調整を組み合わせることで、しびれの緩和と再発予防が可能になります。

また、セルフケアとしてストレッチや温めを取り入れることで、鍼灸治療の効果をさらに高めることができます。慢性的なしびれに悩む方は、鍼灸治療を活用して、健康的で快適な生活を目指しましょう。


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