はじめに:鍼灸院と環境問題
SDGs目標12は「つくる責任、つかう責任」。
製品やサービスの生産から消費、廃棄までを持続可能にすることを目指しています。
一見、工場やメーカーの課題に思われがちですが、小さな鍼灸院でも日々の診療の中で環境に与える影響は少なくありません。
使い捨ての鍼やシャーレ、タオルの洗濯にかかる水や電力、ペーパー消費など。これらをどう工夫するかは、未来にやさしい院運営につながります。
鍼灸院における「資源利用」と「廃棄物」の現状
- ディスポ鍼(使い捨て鍼)
衛生面から必須ですが、使用後は医療廃棄物として処理する必要があり、環境負荷はゼロではありません。 - タオルやシーツの洗濯
水や洗剤、電力を大量に使用するため、環境配慮が求められます。 - 紙資源の消費
問診票や領収書、広告チラシなど、意外と紙ゴミが出やすい。 - エネルギー消費
空調や照明は患者の快適性に直結しますが、同時に電力消費も大きい部分です。
これらを改善することが、まさにSDGs目標12の実践につながります。
鍼灸院でできる環境配慮の具体例
- ディスポ鍼の適切な管理・廃棄
使用量を最適化し、余剰在庫を減らす。処理業者と連携して正しく廃棄することが前提です。 - タオル・リネン類の節水・省エネ洗濯
まとめ洗いや節水型洗濯機の導入、環境に優しい洗剤の使用など。 - ペーパーレス化の推進
電子カルテやオンライン予約システムを導入すれば、紙の使用量を大幅に削減可能です。 - 省エネ設備の導入
LED照明、節電タイマー、エアコンの効率的な運転など、すぐに始められる工夫です。 - ごみ分別とリサイクル
紙やプラスチックを分別し、地域のリサイクルに協力することで「循環型社会」に貢献できます。
取り組みを患者さんに伝える効果
環境配慮の取り組みは「見えない努力」になりがちですが、あえて発信することも大切です。
- 院内掲示やSNSで「当院は環境にやさしい取り組みをしています」と伝える
- 「地球にも体にもやさしい施術」というメッセージでブランディング
- 患者さんにエコバッグ持参やペーパーレス領収書を呼びかける
こうした発信は「この鍼灸院は信頼できる」と感じてもらう要素になり、結果的に集患や定着率アップにつながります。
他業界の事例から学ぶエコ活動
- 美容室:シャンプーの節水やリフィル商品の導入でプラスチック削減
- 整骨院:電子カルテの活用で紙資源を減らす
- カフェ:マイカップやリユース容器の推奨
鍼灸院も同様に、小さな改善の積み重ねが大きな社会的インパクトにつながります。
SDGsと経営の両立
環境配慮は「コストがかかる」と思われがちですが、長期的には経営の安定につながります。
- LED照明 → 電気代削減
- ペーパーレス化 → 印刷費削減
- 節水洗濯 → 水道代削減
- 地域との協力 → 信頼性・集患アップ
つまり「環境にやさしい取り組み」は「経営にもやさしい」取り組みなのです。
まとめ:協力が生む持続可能な医療
SDGs目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」は、鍼灸師が地域や社会とどう関わるかを示す大切なテーマです。
- 医療機関や介護施設との連携で患者を包括的に支える
- 教育や企業との協力で新しい健康の形を提供
- 自治体や地域団体と協力してまち全体の健康度を高める
- 国際的な伝統医療ネットワークにも貢献できる
鍼灸院が地域の中で「孤立した治療院」ではなく、「共に社会を支えるパートナー」として存在すること。これが、SDGs時代に求められる鍼灸師の新しい姿です。
さらに、パートナーシップは社会の信頼を高め、患者とのつながりを強める力も持っています。小さな一歩の協力がやがて大きな輪となり、鍼灸師の活動がまちづくり、そして世界の持続可能性へと広がっていくのです。
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