【2025年版】鍼灸は医療費控除の対象?条件・領収書の書き方・患者への説明テンプレ付き

はじめに:鍼灸師として知っておきたい「医療費控除」の正しい対応

「鍼灸って医療費控除になりますか?」

確定申告の時期が近づくと、患者さんからこのような質問を受ける機会が増えます。
しかし実際には、制度の仕組みや対象となる条件、説明方法まで正確に把握している鍼灸師はまだ多くありません。
「たぶん対象だと思います」「レシート出せば大丈夫ですよ」などと曖昧な返答をしてしまうと、後々患者さんが税務署で否認されたり、不信感を抱かれたりするリスクにつながりかねません。

鍼灸施術が医療費控除の対象になるかどうかは、その施術が“治療目的”であるかどうかが最大のポイントです。
美容目的やリラクゼーション目的では対象にならず、記録の内容や領収書の書き方次第で、税務上の判断が大きく分かれます。

本記事では、2025年8月現在の国税庁の見解を踏まえながら、医療費控除の対象条件・正しい領収書の発行方法・患者への説明文例まで、鍼灸師が現場で即対応できるよう網羅的に解説します。
院内の信頼性向上と患者対応の質を高めるためにも、ぜひ一読しておきましょう。


要点まとめ

  • 治療目的の鍼灸施術は医療費控除の対象になる
  • 疲労回復・美容目的は対象外(明確に区別)
  • ✅ 領収書には「施術内容」「施術者名」「税込金額」を明記する
  • ✅ 患者説明は院内掲示・領収書裏書きなどで丁寧に
  • ✅ 国税庁のガイドラインに基づくテンプレートを使えば安全

1. 医療費控除とは?制度の基本をおさらい

医療費控除とは、1年間(1月1日~12月31日)に支払った医療費の合計が一定額を超えた場合、所得税の一部が還付される制度です。

対象者の要件:

  • 自分または生計を一にする家族の医療費であること
  • 年間の医療費が10万円または総所得金額の5%を超えていること
  • 確定申告で所定の書類(医療費控除の明細書など)を提出すること

つまり、領収書の記載内容や目的の説明が不明確だと、税務署で認められない可能性もあります。鍼灸師側の対応が極めて重要です。


2. 鍼灸施術が医療費控除の対象になる条件

国税庁の見解(2025年8月時点)

「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師による施術で、疾病の治療を目的としている場合、医療費控除の対象となります。」

つまり、「治療目的」であること、そして国家資格を持つ施術者が施術していることが、最低条件です。

✅ 対象となるケースの具体例

  • 慢性的な腰痛、肩こり、神経痛などに対する施術
  • 医療機関の診断後に並行して行う補完的な施術
  • 医師による診断書や同意書がなくても、治療目的であれば対象となる

❌ 対象外となるケース

  • 美容鍼、美顔鍼、痩身目的の施術
  • 疲労回復・リラクゼーション・癒しを目的としたコース
  • 国家資格を持たない施術者による施術

3. 対象外となるケースと注意点

ケース対象理由
「肩こりがつらくて癒されに来た」疲労回復目的とみなされる可能性が高い
「美顔鍼をお願いしたい」美容目的であり対象外
「慢性的な腰痛治療で通っている」明らかな治療目的であり対象
「整形外科と併用している」併用でも問題なし、治療目的であれば対象

税務署では「目的」が重視されるため、施術内容の記録や、領収書の表記が極めて重要です。


4. 領収書の書き方(テンプレDLあり)

医療費控除の可否を左右するのが「領収書の記載内容」です。

✅ 必須記載事項

項目内容補足
① 発行日(施術日)年月日を明記まとめ払いの場合も内訳が望ましい
② 施術内容「鍼灸施術(治療目的)」などコース名ではなく具体的に
③ 金額(総額・税込)例:3,300円(税込)総額表示義務に対応
④ 宛名(患者氏名)フルネームが望ましいご家族の場合はその名前を明記
⑤ 発行者情報院名・住所・電話番号・施術者名国家資格名の記載で信頼性向上

❌ NG例

  • 「施術代」「〇〇コース」など曖昧な表現
  • 金額が「税抜表示」のみ
  • 宛名が空欄・無記載

➡ 領収書テンプレDLはこちら:/communication/medical-expense


5. 患者への説明テンプレ(口頭・掲示・SNS)

患者側も「何が対象なのか」を正確に知らない場合が多いため、鍼灸師側が説明責任を果たすことが求められます。

✅ 院内掲示例

【医療費控除のご案内】
当院での鍼灸施術は、治療目的の場合に限り、医療費控除の対象となることがあります。
領収書には必要事項を記載しておりますので、確定申告の際にご利用ください。

✅ 口頭説明例

「治療目的で通院されている方は、医療費控除の対象になる可能性があります。
領収書を発行しますので、ご希望の方はお声がけください。」

✅ SNSテンプレ(Instagram/X等)

【お知らせ】
治療目的の鍼灸施術は、医療費控除の対象になる場合があります。
領収書の発行は随時可能ですので、お気軽にお申し付けください。
#医療費控除 #確定申告 #鍼灸院


6. よくある質問(FAQ)

Q1:医師の同意書が必要ですか?

いいえ。
医療費控除は保険適用とは別の制度です。治療目的であれば、同意書は必要ありません。


Q2:1回きりの施術でも対象になりますか?

条件を満たせば対象です。
1回の施術でも、治療目的であれば控除対象となる可能性があります。金額や症状によって判断されます。


Q3:家族の分も申告できますか?

はい。
生計を一にする配偶者・子ども・親などの医療費も合算して申告できます。


7. まとめと対応のポイント

チェック項目対応状況
施術が「治療目的」であるか確認しているか?□ 済 □ 未
領収書に必要事項が記載されているか?□ 済 □ 未
院内で患者に案内できる体制があるか?□ 済 □ 未

鍼灸院の施術が医療費控除の対象になるか否かは、施術の目的と記録の残し方にかかっています。疲労回復や美容などの目的では対象外になる一方、治療目的であれば正しい記録と領収書の発行によって控除対象として認められる可能性が高まります。スタッフ全員でこの基準を共有し、患者にも丁寧に説明できる体制を整えることで、信頼される院づくりにつながります。領収書の書式、掲示、SNSでの案内など、できる範囲から備えておくことが、トラブル防止と患者満足度向上の両方に効果的です。

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