鍼灸院のペルソナ設定とは?患者さんに届くホームページ・SNS発信の作り方

鍼灸院の発信が届かない理由

鍼灸院のホームページやSNSを頑張って更新しているのに、なかなか反応がない。
症状について丁寧に説明しているつもりなのに、予約や問い合わせにつながらない。
専門的な内容を書いているのに、患者さんに読まれている実感がない。

このような悩みを持つ鍼灸師の先生は少なくありません。

その原因の一つに、
誰に向けて書いているのかが曖昧になっている
という問題があります。

前回の記事では、「ターゲット設定」について解説しました。

ターゲットとは、自院に来てほしい患者さんの層を決めることです。

たとえば、

「デスクワークによる肩こりに悩む人」
「産後の腰痛や疲労感に悩む女性」
「自律神経の不調で眠れない人」
「スポーツ障害に悩む学生」

といった形で、自院が届けたい相手を明確にします。

今回解説する「ペルソナ」は、そのターゲットをさらに具体化する考え方です。

ターゲットが「層」だとすれば、ペルソナは「一人の患者さん像」です。

鍼灸院の発信を本当に届くものにするためには、漠然と多くの人に向けて書くのではなく、
目の前に一人の患者さんがいるように考えること
が大切です。

マーケティング用語解説:ペルソナとは?

ペルソナとは、マーケティングにおいて、自社の商品やサービスを利用してほしい理想の顧客像を、具体的な一人の人物として設定する考え方です。

ターゲットよりも、さらに細かく人物像を描くのが特徴です。

たとえば、ターゲットが、

「30代女性、肩こりに悩んでいる人」

だとします。

これをペルソナにすると、次のようになります。

「35歳女性。京都市内在住。事務職。平日は1日8時間以上パソコン作業をしている。夕方になると首や肩が重くなり、頭痛が出ることもある。マッサージには何度か行ったが、その場だけ楽になってすぐ戻ってしまう。鍼灸には興味があるが、痛そうで少し不安。Googleで『肩こり 頭痛 鍼灸 京都』と検索している」

このように、年齢、職業、生活習慣、悩み、不安、検索行動まで具体化するのがペルソナ設定です。

ペルソナを設定すると、発信の言葉が一気に具体的になります。

「肩こりでお悩みの方へ」
という一般的な表現よりも、

「夕方になると首や肩が重くなり、頭痛まで出てくるデスクワークの方へ」

と書いた方が、該当する人には深く届きます。

つまり、ペルソナ設定とは、
患者さんの顔が見える状態で言葉を作るための方法
なのです。

なぜ鍼灸院にペルソナ設定が必要なのか

鍼灸院にペルソナ設定が必要な理由は、患者さんの悩みが一人ひとり違うからです。

同じ「肩こり」でも、その背景は人によって異なります。

長時間のデスクワークが原因の人。
育児中の抱っこで肩がつらい人。
ストレスで首や背中がこわばっている人。
睡眠不足や冷えが関係している人。
更年期に入って体調全体が変化している人。

症状名は同じでも、生活背景や求めているものは違います。

そのため、鍼灸院の発信では、単に症状名を並べるだけでは不十分です。

患者さんが本当に知りたいのは、

「自分のこの状態でも相談していいのか」
「どんなふうに見てもらえるのか」
「鍼は痛くないのか」
「どれくらい通えばいいのか」
「先生は自分の悩みを理解してくれそうか」

ということです。

ペルソナを設定すると、こうした患者さんの心理に寄り添った発信がしやすくなります。

たとえば、ペルソナが「初めて鍼灸を受ける30代女性」なら、鍼の刺激や服装、初回の流れ、女性でも安心して通える雰囲気を伝える必要があります。

一方で、ペルソナが「スポーツをしている高校生」なら、競技復帰、ケガの再発予防、試合までのコンディショニングといった情報が重要になります。

このように、ペルソナを決めることで、記事やSNSの内容が患者さん目線に近づいていきます。

ターゲットとペルソナの違い

ターゲットとペルソナは似ていますが、役割が少し違います。

ターゲットは、届けたい患者さんの「集団」を表します。

たとえば、

「産後の腰痛に悩む30代女性」
「デスクワークによる肩こりに悩む会社員」
「自律神経の不調で不眠に悩む人」

といったものです。

一方、ペルソナは、その中にいる一人を具体的に描きます。

たとえば、

「32歳女性。第一子を出産して6ヶ月。抱っこや授乳で腰と背中がつらい。夜中の授乳で睡眠不足が続き、自分の体調管理が後回しになっている。整体や鍼灸に興味はあるが、子連れで行けるのか不安。スマホで『産後 腰痛 鍼灸 子連れ 京都』と検索している」

ここまで具体的にすると、記事に書くべき内容が見えてきます。

このペルソナに向けて記事を書くなら、

「産後の腰痛はなぜ起こるのか」
「抱っこや授乳で負担がかかりやすい部位」
「鍼灸でどのように身体を整えるのか」
「産後いつから相談できるのか」
「子連れ来院は可能か」
「服装や施術時間はどうなるのか」

といった内容が必要になります。

ターゲットは方向性を決めるもの。
ペルソナは、具体的な言葉を作るためのもの。

このように考えるとわかりやすいでしょう。

鍼灸院でのペルソナ設定の具体例

ここでは、鍼灸院で使いやすいペルソナの例をいくつか紹介します。

例1:デスクワークによる肩こり・頭痛に悩む女性

35歳女性。京都市内在住。事務職。
平日は朝から夕方までパソコン作業が中心。
夕方になると首や肩が重くなり、ひどい日は頭痛も出る。
マッサージに行くと一時的に楽になるが、数日で戻ってしまう。
病院に行くほどではないと思っているが、このまま放置していいのか不安。
鍼灸は初めてで、痛そうなイメージがある。
Googleで「肩こり 頭痛 鍼灸 京都」「デスクワーク 首こり 鍼灸」と検索している。

このペルソナに向けた発信では、
「慢性的な肩こりの背景」
「姿勢や目の疲れとの関係」
「鍼灸が初めての人向けの説明」
「施術の流れ」
「痛みへの不安」
を丁寧に伝えるとよいでしょう。

タイトル例としては、

デスクワークによる肩こり・頭痛に鍼灸は向いている?原因と施術の考え方

などが考えられます。

例2:産後の腰痛と疲労感に悩む母親

32歳女性。第一子を出産して半年。
抱っこ、授乳、おむつ替えで腰や背中に負担を感じている。
夜間授乳で睡眠不足が続き、疲れが抜けにくい。
自分の身体のケアをしたいが、赤ちゃんを預けられない。
産後の骨盤や体調の変化も気になっている。
鍼灸には興味があるが、産後に受けてもよいのか、子連れで行けるのかが不安。
スマホで「産後 腰痛 鍼灸」「産後 疲労 鍼灸」「子連れ 鍼灸院」と検索している。

このペルソナに向けた記事では、
「産後の身体の変化」
「抱っこや授乳による負担」
「鍼灸でできるケア」
「産後いつから相談できるか」
「子連れ対応の有無」
などを伝えると、来院前の不安を減らせます。

タイトル例としては、

産後の腰痛や疲れに鍼灸でできること|抱っこ・授乳でつらい身体の整え方

が考えられます。

例3:自律神経の不調で眠れない会社員

42歳男性。管理職。
仕事のストレスが多く、帰宅後も頭が休まらない。
寝つきが悪く、夜中に目が覚めることが増えている。
朝起きても疲れが抜けず、日中の集中力が落ちている。
病院では大きな異常はないと言われたが、体調はすっきりしない。
薬だけに頼るのではなく、身体全体を整えたいと思っている。
鍼灸は少し気になっているが、どんなことをするのかわからない。
「自律神経 不眠 鍼灸」「眠れない 鍼灸」「ストレス 鍼灸」と検索している。

このペルソナに向けては、
「自律神経と睡眠の関係」
「ストレスによる身体の緊張」
「鍼灸で見る全身状態」
「通院の目安」
「初回カウンセリングの内容」
を伝えるとよいでしょう。

タイトル例としては、

自律神経の乱れによる不眠に鍼灸でできること|眠れない原因と身体の整え方

が考えられます。

例4:部活動でケガを繰り返す高校生

17歳男性。高校のバスケットボール部。
練習量が多く、膝や足首に痛みが出やすい。
大会前に痛みが強くなると不安になる。
整形外科で大きな異常はないと言われたが、違和感が残っている。
できるだけ早く競技に戻りたい。
親は安全性や通院頻度を気にしている。
本人は「早く動けるようになりたい」と考えている。
検索するのは本人ではなく、母親が「スポーツ障害 鍼灸」「膝の痛み 高校生 鍼灸」と調べている可能性もある。

このペルソナでは、本人だけでなく保護者の視点も重要です。

発信では、
「競技復帰までの考え方」
「痛みの原因を見極める重要性」
「再発予防」
「保護者向けの説明」
「医療機関との併用」
などを入れると安心感につながります。

ペルソナ設定で考えるべき項目

鍼灸院でペルソナを作るときは、次の項目を整理すると考えやすくなります。

1. 年齢・性別

年齢や性別によって、悩みや来院動機は変わります。

20代の美容目的。
30代の産後ケア。
40代の慢性疲労。
50代の更年期症状。
60代以降の膝や腰の痛み。

誰に向けるかによって、言葉の選び方も変わります。

2. 職業・生活習慣

デスクワーク、立ち仕事、運転、育児、介護、スポーツなど、生活習慣は症状の背景に関わります。

鍼灸院の記事では、症状だけでなく生活背景まで書くことで、患者さんが自分ごととして読みやすくなります。

3. 悩み・症状

肩こり、腰痛、不眠、冷え、頭痛、胃腸の不調、疲労感、美容の悩みなど、どんな症状に悩んでいるのかを整理します。

ここで大切なのは、症状名だけではなく、生活上の困りごとまで書き出すことです。

たとえば、

「肩こり」ではなく、
「夕方になると肩が重くなり、仕事に集中できない」

「不眠」ではなく、
「夜中に何度も目が覚めて、朝から疲れている」

というように具体化します。

4. 来院前の不安

鍼灸院に来る前の患者さんは、多くの不安を持っています。

鍼は痛いのか。
衛生面は大丈夫か。
どんな服装で行けばいいのか。
何回通う必要があるのか。
料金はいくらか。
自分の症状でも相談できるのか。
無理な勧誘はないか。

この不安を事前に解消する内容を発信に入れることで、予約のハードルが下がります。

5. 検索する言葉

SEOを意識するなら、ペルソナがどんな言葉で検索するかを考えることが重要です。

鍼灸師が使う専門用語ではなく、患者さんの言葉を想像します。

たとえば、

「肩こり 鍼灸」
「首こり 頭痛 鍼灸」
「産後 腰痛 鍼灸」
「自律神経 眠れない 鍼灸」
「更年期 不調 鍼灸」
「美容鍼 たるみ」

といった検索語です。

患者さんは、必ずしも専門的な病名で検索するわけではありません。
むしろ、自分の感覚に近い言葉で検索することが多いです。

ペルソナ設定を記事作成に活かす方法

ペルソナを作ったら、それを記事作成に活かします。

たとえば、ペルソナが、

「デスクワークによる肩こりと頭痛に悩む35歳女性」

であれば、記事の内容は次のようになります。

タイトル:
デスクワークによる肩こり・頭痛に鍼灸は向いている?原因と施術の考え方

見出し例:
・デスクワークで肩こりや頭痛が起こりやすい理由
・マッサージで一時的に楽になっても戻りやすい原因
・鍼灸ではどこを見るのか
・鍼が初めての方が不安に感じやすいこと
・来院前に知っておきたい施術の流れ
・日常生活でできるセルフケア

このように、ペルソナが具体的であればあるほど、記事の構成も具体的になります。

逆に、ペルソナが曖昧なまま記事を書こうとすると、

「肩こりとは」
「肩こりの原因」
「肩こりの対策」

といった一般的な内容になりやすく、他の記事との差別化が難しくなります。

SEOで大切なのは、単にキーワードを入れることではありません。
検索している人の悩みに、どれだけ具体的に答えられるかです。

ペルソナ設定は、そのための土台になります。

SNS発信にもペルソナは役立つ

ペルソナ設定は、ホームページの記事だけでなく、SNSにも役立ちます。

たとえば、ペルソナが「鍼灸が初めてで不安な人」なら、SNSでは次のような投稿が考えられます。

「鍼は痛いですか?とよく聞かれます」
「初回はどんな流れで進むのか」
「服装はどうすればいいのか」
「施術後はだるくなることがあるのか」
「どんな症状で相談していいのか」

こうした投稿は、来院前の不安を和らげます。

また、ペルソナが「デスクワークの肩こりに悩む人」なら、

「夕方に肩が重くなる人の共通点」
「首こりと目の疲れの関係」
「座りっぱなしで腰がつらい人へ」
「仕事中にできる簡単な肩まわりのケア」

といった投稿が考えられます。

SNSでは、専門的な知識を短くわかりやすく伝えることが大切です。

ペルソナが決まっていれば、投稿のテーマに迷いにくくなります。

よくある失敗例

ペルソナ設定でよくある失敗も確認しておきましょう。

失敗例1:細かく作りすぎて現実味がなくなる

ペルソナは具体的にすることが大切ですが、細かすぎる設定はかえって使いにくくなります。

たとえば、趣味や好きな食べ物まで細かく決めても、鍼灸院の発信に関係しない場合はあまり意味がありません。

重要なのは、施術や来院判断に関わる情報です。

年齢、生活背景、悩み、不安、検索する言葉を中心に整理しましょう。

失敗例2:自分に都合の良い患者像だけを作る

「高単価でも迷わず通ってくれる人」
「説明しなくても価値をわかってくれる人」
「必ずリピートしてくれる人」

このように、自院に都合の良い理想像だけを作ってしまうと、現実の患者さんとのズレが生まれます。

ペルソナは、都合の良い空想ではなく、実際の患者さんの悩みや心理に基づいて作ることが大切です。

失敗例3:一度作って終わりにする

ペルソナは、一度作ったら終わりではありません。

実際に来院している患者さんの声や口コミ、問い合わせ内容をもとに、少しずつ見直していく必要があります。

「思っていた悩みと違う相談が多い」
「意外とこの年代の患者さんが多い」
「この症状の記事から問い合わせが増えた」

こうした情報をもとに、ペルソナを更新していくことが重要です。

今日からできる実践ポイント

まずは、自院に来てほしい患者さんを一人だけ想像して、次の項目を書き出してみてください。

名前は仮で構いません。
年齢は何歳くらいですか。
性別はどちらですか。
どんな仕事や生活をしていますか。
どんな症状で困っていますか。
その症状によって日常生活で何がつらくなっていますか。
鍼灸院に来る前に何を不安に感じていますか。
過去にどんな対処をしてきましたか。
Googleでどんな言葉を検索しそうですか。
その人に最初に伝えるべき言葉は何ですか。

これを書くだけでも、発信の方向性がかなり明確になります。

たとえば、

「肩こりで悩む人」

ではなく、

「35歳の事務職女性。夕方になると首肩が重くなり、頭痛も出る。マッサージでは一時的にしか楽にならず、鍼灸に興味はあるが痛みが不安」

と書ければ、ホームページやSNSで使う言葉が変わります。

ペルソナ設定は、難しいマーケティング理論ではありません。

目の前にいる一人の患者さんに、どうすれば安心してもらえるかを考える作業です。

まとめ

鍼灸院のマーケティングにおいて、ペルソナ設定はとても重要です。

ペルソナとは、自院に来てほしい患者さんを一人の人物として具体的に描く考え方です。

年齢、職業、生活背景、悩み、不安、検索する言葉まで整理することで、ホームページやSNSの発信は一気に具体的になります。

患者さんは、一般論ではなく、
「これは自分のことかもしれない」
と思える情報に反応します。

そのためには、漠然と多くの人に向けて書くのではなく、一人の患者さんに向けて書くことが大切です。

ターゲットは、届けたい患者さんの層を決めること。
ペルソナは、その中の一人を具体的に描くこと。

この2つを使い分けることで、鍼灸院の発信はより伝わりやすくなります。

マーケティングは、売り込みではありません。
患者さんの悩みを理解し、必要な情報をわかりやすく届けるための考え方です。

ペルソナ設定は、その第一歩になります。

次回は、地域の中で自院がどのように選ばれるかを考える
「ポジショニング」
について解説します。


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