仙腸関節炎に対する鍼灸治療|腰や臀部の痛みを和らげるツボと施術方法

はじめに:仙腸関節炎とは

腰痛や臀部の痛みを引き起こす原因の一つである仙腸関節炎。この疾患は、骨盤の中央部に位置する「仙腸関節」に炎症が生じることで発症します。この関節は、脊椎と骨盤をつなぎ、体重を下半身に伝える役割を担っています。そのため、座る、立つ、歩くといった日常の動作において重要な関節であり、ここに負担がかかると痛みや不調が現れることがあります。

仙腸関節炎は男女問わず発症しますが、特に以下の状況で発症リスクが高まります。

  • 長時間の座位や立位
    一定の姿勢を続けることで仙腸関節に負担が集中します。
  • 妊娠・出産
    骨盤が広がることやホルモンの変化によって関節が不安定になります。
  • 外傷やスポーツ
    激しい運動や転倒などで関節や周辺組織が損傷することがあります。
  • 加齢
    加齢により関節や筋肉が硬くなることで、仙腸関節の可動域が狭まり炎症が起きやすくなります。

仙腸関節炎は、日常生活に支障をきたすことが多いため、早期の対応が必要です。


仙腸関節炎の症状

仙腸関節炎の主な症状は以下の通りです。

1. 腰や臀部に集中する痛み

仙腸関節の炎症が起きると、腰から臀部にかけての痛みが現れます。この痛みは片側に偏ることが多く、立ったり座ったりする際に強く感じるのが特徴です。

2. 動作による痛みの増強

階段の昇降や椅子から立ち上がる動作など、関節に負担がかかる動きで痛みが悪化します。特に朝の起床時に痛みが強く、徐々に和らぐ場合もあります。

3. 鈍い違和感や慢性的な不快感

急性期の痛みが治まった後も、鈍い違和感や慢性的な不快感が続くことがあります。これが慢性化すると、姿勢の悪化や運動不足につながる可能性があります。

4. 周辺筋肉の緊張と硬直

炎症をかばう姿勢の影響で、腰部や臀部周辺の筋肉が硬くなることがあります。これがさらに痛みを助長する悪循環に陥ることがあります。


仙腸関節炎に対する鍼灸治療の効果

鍼灸は、仙腸関節炎の症状を和らげる効果が期待される治療法の一つです。ツボを刺激することで血流を促進し、筋肉の緊張を和らげる効果があり、痛みや炎症を緩和します。また、慢性化した症状や再発予防にも役立ちます。

鍼灸治療の具体的な効果は以下の通りです。

1. 血流改善と炎症緩和

鍼やお灸による刺激で、血液循環が良くなり、炎症部位の代謝が促進されます。これにより、痛みの原因となる炎症が鎮まります。

2. 筋肉の緊張緩和

鍼灸の施術は、仙腸関節周辺の硬直した筋肉をリラックスさせます。筋肉が柔らかくなることで、関節への負担が軽減されます。

3. 自律神経の調整

鍼灸は自律神経に働きかけるため、リラクゼーション効果があり、痛みの感受性を抑えることができます。慢性化した痛みに対しても有効です。


仙腸関節炎に効果的なツボと施術方法

仙腸関節炎の鍼灸治療で用いられる主なツボを紹介します。これらは、腰や臀部の痛みを和らげるために特に効果的です。

1. 腎兪(じんゆ)

  • 位置:第2腰椎の左右1.5寸の位置。
  • 効果:腎兪を刺激することで腰部全体の血流が改善し、筋肉の緊張が緩和されます。腰痛全般に使用されるツボです。

2. 腰眼(ようがん)

  • 位置:腰部のくぼんだ部分で、腎兪のさらに外側に位置します。
  • 効果:腰部全体の筋肉をリラックスさせ、炎症や急性の痛みを軽減します。温灸を併用することでさらに効果が高まります。

3. 環跳(かんちょう)

  • 位置:臀部の中央付近、坐骨神経に近い部分。
  • 効果:臀部から仙腸関節周辺の筋肉をほぐし、痛みを軽減します。下肢への放散痛がある場合にも有効です。

4. 承扶(しょうふ)

  • 位置:臀部の下部に位置するツボ。
  • 効果:仙腸関節から下肢にかけての筋肉の緊張を緩和し、痛みを軽減します。

5. 委中(いちゅう)

  • 位置:膝裏の中央にあるツボ。
  • 効果:腰から下肢への血流を改善し、腰や臀部の筋肉の緊張を和らげます。

施術のポイント

仙腸関節炎の鍼灸治療では、以下のポイントを重視します:

  1. 急性期は穏やかな刺激で
    炎症が強い急性期には、軽めの刺激で筋肉をリラックスさせる施術が適しています。
  2. 温灸で体を温める
    腰や臀部を温める温灸は、血流を改善し、痛みを和らげる効果があります。冷えが強い患者に特に有効です。
  3. 広範囲のツボを活用
    腰部だけでなく、臀部や下肢にもツボを選び、全体的な血流改善と緊張緩和を図ります。

予防とセルフケア

仙腸関節炎の再発予防には、日常生活でのケアが欠かせません。以下のポイントを意識しましょう。

1. ストレッチの習慣化

骨盤周辺の柔軟性を保つために、ストレッチを習慣にしましょう。特に臀部や太ももの筋肉をほぐす動作が効果的です。

2. 正しい姿勢の維持

座る際は骨盤を立てる意識を持ち、腰に負担がかからない姿勢を心がけます。

3. 筋力トレーニング

腸腰筋や腹筋を鍛えることで、骨盤周囲の安定性を高め、仙腸関節への負担を軽減します。

4. 温めケア

冷えが仙腸関節炎を悪化させるため、腰や骨盤を温める習慣をつけましょう。


まとめ

仙腸関節炎は、腰や臀部の痛みを引き起こし、日常生活に支障をきたす疾患です。鍼灸は「腎兪」「腰眼」「環跳」などのツボを中心に施術を行い、血流改善や筋肉の緊張緩和を図ります。

また、セルフケアとしてストレッチや筋力トレーニングを取り入れることで、再発予防と症状の緩和が期待できます。鍼灸とセルフケアを組み合わせ、仙腸関節炎の痛みを効果的に和らげましょう。

このように、患者に寄り添った鍼灸治療と生活改善を通じて、健康的な生活をサポートします。


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