椎間板ヘルニアに対する鍼灸治療|症状緩和と神経痛の軽減を目指すアプローチ方法

1. 椎間板ヘルニアとは?

椎間板ヘルニアは、脊椎の骨と骨の間にあるクッションの役割を果たす「椎間板」が突出し、神経を圧迫することで発生する症状です。主に腰椎(腰の部分)で発生しやすく、圧迫された神経によって腰から足にかけての痛みやしびれ、さらには筋力低下が引き起こされることがあります。悪化すると、日常生活にも支障をきたし、手術が検討されるケースもあります。

椎間板ヘルニアは、長時間の座り仕事、無理な姿勢や重労働、加齢などが原因で椎間板に過剰な負担がかかり、椎間板内部の髄核が外に飛び出して神経を圧迫することで発症します。


2. 椎間板ヘルニアの主な症状と特徴

椎間板ヘルニアの症状は、主に神経の圧迫によるもので、痛みやしびれが主症状です。以下は椎間板ヘルニアでよく見られる症状です。

  • 腰から足にかけての放散痛
    腰の痛みだけでなく、坐骨神経を介して太ももやふくらはぎ、足先まで痛みが広がることがあります。
  • しびれや感覚異常
    神経が圧迫されると、しびれや感覚の鈍さが腰から足にかけて生じることが多いです。
  • 筋力低下
    長期的に神経が圧迫されることで、下肢の筋力低下が見られることもあります。重度の場合、足が上がりにくくなるなどの動作に支障が出ることがあります。
  • 症状の悪化と緩和が交互に起こる
    安静にすると痛みが和らぐことがある一方、再発や慢性化しやすい特徴があります。

3. 椎間板ヘルニアに対する鍼灸治療の目的

椎間板ヘルニアに対する鍼灸治療は、神経の圧迫による痛みやしびれを和らげることを目的としています。以下の3つの効果が期待できます。

  1. 神経の圧迫を軽減
    鍼灸により、椎間板周囲の筋肉を緩め、神経への圧迫を軽減することで痛みやしびれが和らぎます。
  2. 血行促進と炎症緩和
    鍼による刺激で血流が改善し、筋肉や神経の周りに蓄積した疲労物質が排出されやすくなります。また、炎症の鎮静化を図ることで痛みの緩和が期待されます。
  3. 筋肉の柔軟性とリラックス効果
    周囲の筋肉が硬直していると、神経がさらに圧迫されてしまいます。鍼灸で筋肉をリラックスさせることで、筋肉の柔軟性が向上し、痛みが軽減されやすくなります。

4. 椎間板ヘルニアに効果的なツボと鍼灸アプローチ

椎間板ヘルニアに対して鍼灸を行う際は、腰の痛みや神経痛を和らげるためのツボを中心に施術します。以下は、椎間板ヘルニアの症状緩和に効果的な主要なツボです。


(1) 大腸兪(だいちょうゆ)

  • 位置:第4腰椎棘突起の外側、約1.5寸の位置にあります。
  • 効果:慢性的な腰痛や神経痛の改善に有効なツボで、腰部の血行を促進し、痛みを和らげます。
  • 施術法:鍼を深く刺入し、硬直した筋肉をほぐします。温灸も併用することで、腰の温度が上がり、血行促進の効果が高まります。

(2) 腎兪(じんゆ)

  • 位置:第2腰椎棘突起の左右約1.5寸。
  • 効果:腎兪は腰痛全般に広く使われ、腰部の筋肉をリラックスさせる効果があります。椎間板ヘルニアによる痛みやしびれにも効果が期待されます。
  • 施術法:鍼を用いて深部の筋肉まで刺激を与え、血行改善と筋肉の緊張緩和を促進します。温灸を使用するとさらに効果が高まります。

(3) 委中(いちゅう)

  • 位置:膝の裏側の中央にあるツボです。
  • 効果:腰部や下肢の痛みやしびれに効果的で、特に椎間板ヘルニアで坐骨神経が圧迫されている場合に有効です。
  • 施術法:委中に鍼を刺入し、下肢への血流を良くすることで痛みの緩和を図ります。椎間板ヘルニアの患者には、心地よい程度の刺激を与えることで、リラックス効果も期待できます。

(4) 環跳(かんちょう)

  • 位置:臀部にあり、坐骨神経の痛み緩和に使われるツボ。
  • 効果:坐骨神経痛に効果的で、腰から臀部・下肢にかけての痛みやしびれを緩和します。
  • 施術法:鍼で深部の筋肉にしっかりと刺激を与え、坐骨神経周りの筋肉をリラックスさせます。深めの刺入により、神経への圧迫が軽減され、痛みの緩和が期待されます。

5. 椎間板ヘルニアに対する鍼灸治療のポイントと注意点

椎間板ヘルニアの患者に対する鍼灸治療には、以下のポイントと注意点が重要です。

  1. 深い刺入で筋肉の硬直を緩和
    神経が圧迫されている場合、筋肉が深部で硬直していることが多いため、適度な深さで刺入し、しっかりとした刺激を与えることがポイントです。
  2. 痛みの原因を把握し、ツボを選定
    腰部だけでなく、臀部や下肢にも痛みが広がっている場合、坐骨神経に関連するツボ(例:環跳、承扶、委中)も併用することで、より効果的に痛みを緩和できます。
  3. 温灸の併用で血行促進とリラックス効果
    鍼施術後に温灸を使用することで、筋肉を温めながら血流が促進され、痛みの緩和が期待できます。特に慢性化した症状には温灸の併用が効果的です。
  4. 施術後の安静とセルフケア指導
    椎間板ヘルニアは再発しやすいため、施術後には無理な姿勢を避け、腰に負担をかけない動作を心がけるよう指導しましょう。さらに、自宅での簡単なストレッチや温熱療法の指導も行うと、再発予防につながります。

まとめ

椎間板ヘルニアは神経の圧迫による痛みやしびれが特徴の疾患であり、鍼灸治療は筋肉の緊張をほぐし、血行を改善することで痛みやしびれを和らげるのに効果的です。特に「大腸兪」「腎兪」「委中」「環跳」などのツボを中心に施術することで、神経への圧迫が軽減され、痛みが和らぎやすくなります。

患者には施術後の安静やセルフケアも勧め、腰に負担をかけない生活習慣を身につけてもらうことも、鍼灸師としての大切な役割です。適切なアプローチを通じて、椎間板ヘルニアによる痛みの軽減をサポートしましょう。


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