膝痛に対する疾患別の鍼灸アプローチ|原因別に見る施術とセルフケアの提案

はじめに

膝痛は、多くの人が経験する悩みの一つですが、その原因や症状は人によって異なります。膝痛を引き起こす疾患にはさまざまな種類があり、それぞれの原因に応じた適切なアプローチが必要です。

鍼灸は、膝痛の根本原因に働きかける治療法として、筋肉の緊張をほぐし、血行を促進し、関節周囲の炎症を緩和する効果が期待できます。本記事では、膝痛を引き起こす主な疾患と、それぞれに対応する鍼灸の施術法を解説します。


膝痛を引き起こす主な疾患と鍼灸のアプローチ

1. 変形性膝関節症(膝OA)

変形性膝関節症は、膝の軟骨がすり減り、関節が炎症を起こす疾患です。特に中高年に多く見られ、加齢、体重増加、運動不足などが主な原因とされています。膝の腫れや痛み、階段の昇降時の違和感が特徴です。

鍼灸のアプローチ

  • 主要なツボ:「足三里(あしさんり)」「膝眼(しつがん)」「陽陵泉(ようりょうせん)」
  • 施術法:膝周囲の血行を促進し、痛みや炎症を軽減します。特に、膝眼や陽陵泉は関節の腫れや動きの改善に効果的です。全身調整を行い、体重管理や筋力強化もサポートします。

2. 半月板損傷

半月板は膝関節内の軟骨で、クッションの役割を果たしています。スポーツや急な動作、加齢による変性で損傷し、膝の痛みや動作の制限を引き起こします。

鍼灸のアプローチ

  • 主要なツボ:「陰陵泉(いんりょうせん)」「内膝眼(ないしつがん)」「豊隆(ほうりゅう)」
  • 施術法:損傷部位への負担を軽減するため、膝周囲の筋肉の緊張を緩和します。炎症が強い場合は穏やかな刺激で血行を改善し、リハビリを補助します。

3. 靭帯損傷(前十字靭帯・後十字靭帯)

靭帯損傷はスポーツなどで発生しやすく、膝の不安定感や痛みを伴います。重症の場合は手術が必要になることもありますが、鍼灸は回復期の補助として有効です。

鍼灸のアプローチ

  • 主要なツボ:「膝陽関(しつようかん)」「足三里」「伏兎(ふくと)」
  • 施術法:膝周辺の血流を促進し、損傷部位の回復をサポートします。筋肉の柔軟性を高め、膝への負担を軽減します。温灸を併用して痛みを和らげることも効果的です。

4. 膝蓋骨周囲の痛み(膝蓋骨炎・ジャンパー膝)

膝蓋骨周囲の痛みは、スポーツや過剰な負荷による膝蓋腱の炎症が原因で、特にジャンパー膝として知られています。膝の前部に痛みが生じ、運動時に悪化することが多いです。

鍼灸のアプローチ

  • 主要なツボ:「犢鼻(とくび)」「膝眼」「陽陵泉」
  • 施術法:膝前部の炎症を抑える施術を行い、周囲の筋肉をほぐして緊張を緩和します。トレーニングによる負荷の軽減を指導することで再発を防ぎます。

5. 滑液包炎

膝の滑液包(関節周囲のクッションの役割を持つ袋)が炎症を起こし、腫れや痛みを引き起こします。長時間の膝つきやケガが原因となります。

鍼灸のアプローチ

  • 主要なツボ:「内膝眼」「膝陽関」「三陰交」
  • 施術法:滑液包の炎症を和らげ、膝の可動域を改善します。温灸を使用して血流を促進し、関節の機能を回復させます。

鍼灸による膝痛改善のポイント

1. 全身調整を重視

膝痛の原因は局所だけでなく、腰や足首など全身のバランスに関係している場合があります。鍼灸では、膝以外の関連部位にもアプローチすることで、根本的な改善を目指します。

2. 症状に応じた施術法の選択

炎症が強い急性期には穏やかな刺激を用い、慢性化した痛みには深部の筋肉やツボを的確に刺激する施術を行います。

3. セルフケアの提案

患者自身が自宅で取り組めるセルフケアを指導することで、治療効果を持続させ、再発を予防します。


膝痛を予防するセルフケア

1. 適度なストレッチ

膝周囲の筋肉(大腿四頭筋やハムストリングス)を伸ばすストレッチを行い、柔軟性を高めましょう。

2. 温活を取り入れる

膝を温めることで血流を促進し、筋肉の緊張や痛みを軽減します。入浴や温湿布がおすすめです。

3. 体重管理

膝への負担を減らすため、適切な体重を維持することが大切です。バランスの良い食事と適度な運動を心がけましょう。

4. 正しい姿勢と歩行

膝に負担がかかりにくい歩き方や姿勢を意識し、普段の生活で膝を保護しましょう。


まとめ

膝痛は多くの人が抱える問題ですが、原因となる疾患や症状は人それぞれ異なります。鍼灸は膝痛の根本的な原因に働きかけ、痛みや炎症を和らげるだけでなく、全身のバランスを整える治療法として有効です。

セルフケアを取り入れることで、治療効果をさらに高め、再発を予防できます。膝痛にお悩みの方は、鍼灸治療を通じて快適な生活を取り戻しましょう。


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