ダイノルフィンは、体内で作られる内因性オピオイドペプチドの一群です。κ(カッパ)オピオイド受容体を介する働きがよく研究され、痛みやストレスに関わる神経回路との関連が報告されています。ただし、作用は状況や脳・脊髄の部位などで異なり、「増やせばよい」「減らせばよい」と一律にはいえません。病気の診断や治療選択に使う一般的な検査・セルフケアも確立していません。
ダイノルフィンとは
ダイノルフィンは、プロダイノルフィン(PDYN)という前駆体から作られるペプチド群です。内因性オピオイドとは、体内で作られ、オピオイド受容体などに作用する物質の総称です。医療用オピオイド薬そのものを指す言葉ではありません。
ダイノルフィン類はκオピオイド受容体に結合しやすいことで知られます。一方、生成されるペプチドの種類や作用は複雑で、κ受容体を介さない作用も研究されています。
痛みとの関係
動物実験や基礎研究では、ダイノルフィン系は痛みの信号を抑える場合と、条件によって痛みに関わる反応を強める場合の両方が報告されています。どの作用が表れるかは、ペプチドの種類、作用する場所、刺激の条件などによって異なります。
そのため、「ダイノルフィンは鎮痛物質」「ダイノルフィンが多いと慢性痛になる」と単純化できません。基礎研究の知見だけで、個人の痛みの原因や治療法を判断することもできません。
ストレスや気分との関係
κオピオイド受容体とダイノルフィンの系は、ストレス反応や情動、報酬に関わる神経回路の研究対象です。動物研究を中心に、ストレスに伴う行動変化などとの関連が調べられています。
これらの研究から、ヒトの不安やうつの原因をダイノルフィンだけに帰したり、体内のダイノルフィン量から気分や病気を説明したりすることはできません。治療が必要な症状は、医療機関で相談してください。
ダイノルフィンを増減する方法はある?
ダイノルフィンを直接増やしたり減らしたりして、痛みや気分を整える確立した一般向けの方法は確認されていません。運動、睡眠、呼吸法、鍼灸などを「ダイノルフィンを調整する方法」として勧める根拠も、この原稿で確認した資料からは示せません。
痛みやストレスに対しては、ダイノルフィンの量を自己判断で調整しようとせず、症状に応じた診療や支援を受けてください。薬を使っている人は、自己判断で中止・変更しないでください。
よくある質問
ダイノルフィンはエンドルフィンと同じものですか?
どちらも内因性オピオイドの仲間ですが、別の前駆体から作られるペプチド群で、作用する受容体の傾向なども異なります。
ダイノルフィンを測定すれば、痛みやうつの原因がわかりますか?
一般診療で痛みやうつの原因を特定する検査として確立していません。診断は症状や診察、必要な検査などを踏まえて医療機関が行います。
鍼灸でダイノルフィンを調整できますか?
鍼通電とダイノルフィンを調べた研究には、動物実験のほか、痛みのある人の脳脊髄液中の物質を測定した小規模な報告もあります。ただし、特定条件で物質量が変化したという観察だけでは、鍼灸がダイノルフィンを通じて痛みなどを治療すると証明したことにはなりません。鍼灸を希望する場合も、必要な診療や治療の代わりにせず、医療従事者に相談してください。
参考情報
- Fundamentals of the Dynorphins / Kappa Opioid Receptor System: From Distribution to Signaling and Function(総説)
- 30 Years of Dynorphins – New Insights on Their Functions in Neuropsychiatric Diseases(総説)
- Does the kappa opioid receptor system contribute to pain aversion?(総説)
- 脳脊髄液中のダイノルフィンと電気鍼を調べた小規模な臨床報告(1989年)






