患者さんは鍼灸院を知っただけでは予約しない
鍼灸院の存在を知ってもらうことは、集客の大切な第一歩です。
しかし、看板を見た人、Instagramの投稿を見た人、Google検索でホームページを見つけた人が、そのまますぐ予約するとは限りません。
患者さんは鍼灸院を知った後に、
「どんな院なのだろう」
「自分の悩みに合っているだろうか」
「鍼は痛くないだろうか」
「他の患者さんの評判はどうだろう」
「料金はいくらだろう」
「本当に予約しても大丈夫だろうか」
と考えます。
さらに、Googleで院名を検索したり、口コミを読んだり、ホームページやSNSを見比べたりします。
そのうえで不安が軽くなり、
「ここなら相談できそう」
と思ったときに予約へ進みます。
つまり、患者さんが鍼灸院を知ってから予約するまでには、いくつかの心理的な段階があります。
その行動や心理を整理するために使われるマーケティング用語が、今回解説する AIDMAとAISAS です。
マーケティング用語解説:AIDMAとは?
AIDMAは、消費者が商品やサービスを知ってから行動するまでの心理を、5つの段階に分けた考え方です。
それぞれの頭文字を取って、AIDMAと呼ばれます。
A:Attention(注意・認知)
商品やサービスの存在を知る段階です。
I:Interest(興味・関心)
自分に関係がありそうだと興味を持つ段階です。
D:Desire(欲求)
利用してみたい、受けてみたいと思う段階です。
M:Memory(記憶)
すぐには行動しなくても、必要なときの選択肢として覚えておく段階です。
A:Action(行動)
予約、問い合わせ、来院などの具体的な行動を起こす段階です。
鍼灸院に置き換えると、次のようになります。
地域の看板やSNSで鍼灸院を知る。
肩こりに対応していると知って興味を持つ。
自分も受けてみたいと思う。
すぐには予約せず、院名を覚えておく。
症状がつらくなったときに予約する。
AIDMAは、患者さんが必ずしもすぐに予約するわけではなく、一度記憶してから行動する可能性があることを示しています。
マーケティング用語解説:AISASとは?
AISASは、インターネットやSNSが普及した時代の消費者行動を表したモデルです。
AIDMAと同じく、それぞれの頭文字から構成されています。
A:Attention(注意・認知)
商品やサービスを知る段階です。
I:Interest(興味・関心)
自分に関係がありそうだと興味を持つ段階です。
S:Search(検索)
GoogleやSNSなどで詳しい情報を調べる段階です。
A:Action(行動)
予約、購入、問い合わせなどを行う段階です。
S:Share(共有)
利用した感想を口コミやSNSで共有する段階です。
鍼灸院に置き換えると、
Instagramで鍼灸院の投稿を見る。
自分の肩こりに関係がありそうだと興味を持つ。
Googleで院名や口コミを検索する。
WebやLINEから予約する。
施術後にGoogle口コミやSNSで感想を共有する。
という流れになります。
現在の鍼灸院集客では、患者さんが検索し、口コミを確認し、利用後に情報を共有することが一般的です。
そのため、AIDMAだけでなく、AISASの視点も重要になります。
AIDMAとAISASの違い
AIDMAとAISASの大きな違いは、検索と共有が含まれているかどうかです。
AIDMAでは、商品やサービスを知った後、欲しいと思い、記憶してから行動すると考えます。
一方、AISASでは、興味を持った後に自分で検索し、利用後には体験を共有すると考えます。
鍼灸院の場合、昔は、
看板を見る。
家族や知人から話を聞く。
電話帳や地域情報誌を見る。
院名を覚えておく。
必要になったら電話する。
という流れが中心でした。
現在は、
SNSや広告で知る。
Googleで院名を検索する。
Googleマップで場所を確認する。
口コミを読む。
ホームページで料金や先生を確認する。
LINEやWebから予約する。
施術後に口コミを書く。
という流れが増えています。
ただし、AIDMAが古くて使えないということではありません。
地域の看板や紹介で院名を知り、数ヶ月後に症状がつらくなったときに思い出して予約する人もいます。
鍼灸院では、AIDMAとAISASの両方を組み合わせて考えることが大切です。
鍼灸院のAIDMAを具体例で考える
ここでは、デスクワークによる首肩こりに悩む患者さんを例に、AIDMAの流れを見てみましょう。
Attention:鍼灸院を知る
患者さんが通勤中に看板を見たり、Instagramで投稿を見たり、知人から院名を聞いたりします。
この段階では、まだ予約するつもりはないかもしれません。
大切なのは、
「この地域に鍼灸院がある」
「肩こりについて相談できるらしい」
と知ってもらうことです。
鍼灸院側でできることとしては、
看板をわかりやすくする。
Googleビジネスプロフィールを整える。
地域名を入れたホームページを作る。
SNSで症状や院の雰囲気を発信する。
地域イベントへ参加する。
などがあります。
Interest:自分に関係があると感じる
患者さんは、
「デスクワークによる肩こりに対応」
「夕方になると首肩が重くなる方へ」
という発信を見て、
「これは自分に関係があるかもしれない」
と感じます。
単に、
「鍼灸施術を行っています」
と書くよりも、
「長時間のパソコン作業による首肩こりや頭痛にお悩みの方へ」
と書いた方が、患者さんは興味を持ちやすくなります。
この段階では、ターゲットやペルソナを意識した発信が重要です。
Desire:受けてみたいと思う
興味を持った患者さんは、さらに詳しい情報を見ます。
施術を受けることで、
「肩が少し楽になるかもしれない」
「仕事に集中しやすくなるかもしれない」
「頭痛薬を飲む回数を減らせるかもしれない」
と期待し始めます。
ここでは、施術内容だけでなく、患者さんが得られるベネフィットを伝えることが大切です。
たとえば、
「首肩の緊張や姿勢、眼精疲労などを確認しながら、仕事を続けやすい身体づくりを目指します」
と伝えることで、施術後の変化を想像しやすくなります。
Memory:選択肢として記憶する
患者さんは興味を持っても、その場ですぐ予約するとは限りません。
仕事が忙しい。
症状がまだ我慢できる。
予定を確認したい。
ほかの院も比較したい。
鍼を受ける決心がつかない。
こうした理由で、一度保留にすることがあります。
そのため、必要になったときに思い出してもらうことが重要です。
院名や特徴がわかりにくいと、患者さんは後から思い出せません。
「自律神経の不調に詳しい院」
「駅前の女性鍼灸師がいる院」
「仕事帰りに通える鍼灸院」
というように、明確なポジショニングがあると記憶されやすくなります。
SNSを継続して更新したり、Googleマップへ投稿したりすることも、思い出してもらうきっかけになります。
Action:予約する
肩こりや頭痛が強くなったとき、患者さんは以前見た鍼灸院を思い出します。
ホームページを確認し、料金や予約方法を見て、LINEやWebから予約します。
この段階では、予約導線のわかりやすさが重要です。
予約ボタンが見つからない。
どのメニューを選べばよいかわからない。
料金が書かれていない。
問い合わせへの返信が遅い。
こうした問題があると、予約直前で離脱する可能性があります。
鍼灸院のAISASを具体例で考える
次に、SNSをきっかけに美容鍼へ興味を持った患者さんを例に、AISASを見てみましょう。
Attention:SNSで知る
Instagramで美容鍼に関する投稿が表示されます。
患者さんは、施術写真や顔のむくみに関する解説を見て、院の存在を知ります。
この段階では、投稿の見出しや画像が重要です。
「美容鍼を行っています」
よりも、
「朝の顔のむくみや食いしばりが気になる方へ」
という投稿の方が、自分との関係に気づきやすくなります。
Interest:興味を持つ
投稿を読んだ患者さんは、
「食いしばりと顔のむくみは関係があるのか」
「自分にも当てはまるかもしれない」
と興味を持ちます。
ここで大切なのは、過剰に美容効果を強調することではなく、わかりやすく誠実な情報を届けることです。
Search:検索する
興味を持った患者さんは、その場ですぐ予約するのではなく、検索します。
Googleで院名を検索する。
Googleマップで口コミを見る。
ホームページで料金を確認する。
Instagramの過去投稿を見る。
先生のプロフィールを確認する。
「美容鍼 痛い」などの関連情報を調べる。
この検索段階で、媒体ごとの情報が一致していることが重要です。
SNSでは美容鍼を紹介しているのに、ホームページに情報がない。
料金が媒体によって違う。
Googleマップの営業時間が更新されていない。
このような状態は、患者さんの不安につながります。
Action:予約する
情報を調べて納得した患者さんは、予約へ進みます。
予約時には、
料金が明確である。
初回メニューがわかる。
所要時間が記載されている。
LINEやWebで簡単に予約できる。
キャンセル方法がわかる。
といった情報が必要です。
患者さんが迷わず予約できる導線を用意しましょう。
Share:体験を共有する
施術を受けた患者さんが、
Google口コミを書く。
Instagramのストーリーズで紹介する。
家族や友人へ話す。
LINEで院の情報を送る。
といった形で体験を共有します。
この共有された情報は、次の患者さんのAttentionやInterestにつながります。
つまり、AISASは一度で終わる直線的な流れではありません。
ある患者さんの口コミが、別の患者さんの認知や検索のきっかけになる循環構造を持っています。
AIDMA・AISASから考える鍼灸院の情報発信
AIDMAやAISASを理解すると、すべての投稿やページに予約を求める必要はないことがわかります。
患者さんの段階に合わせて、情報の役割を分けることが大切です。
認知をつくる情報
地域の人に存在を知ってもらうための発信です。
院の外観。
先生の紹介。
地域名を含む投稿。
季節の不調に関する情報。
地域イベントへの参加。
看板やチラシ。
この段階では、まず目に留まり、何の院かわかることが重要です。
興味を持ってもらう情報
患者さんが、自分に関係があると感じるための情報です。
「デスクワークで首肩がつらい方へ」
「産後、抱っこで腰が痛い方へ」
「眠りが浅く、朝から疲れている方へ」
「食いしばりで顔まわりがこわばる方へ」
症状名だけでなく、生活場面や患者さんの言葉を使いましょう。
検索・比較に答える情報
鍼灸院を比較している患者さんに必要な情報です。
対応症状。
施術方針。
先生の資格や経歴。
料金。
初回の流れ。
施術時間。
アクセス。
口コミ。
院内写真。
よくある質問。
この段階では、良いことだけを並べるのではなく、判断に必要な情報をわかりやすく公開することが重要です。
予約を後押しする情報
予約直前の患者さんが迷わないための情報です。
初回はどのメニューを選ぶか。
予約方法。
空き状況。
持ち物。
服装。
支払い方法。
キャンセル方法。
問い合わせ先。
予約ボタンは、ホームページの各ページから見つけやすい位置に設置しましょう。
共有したくなる体験
口コミは、施術後に突然お願いするだけで増えるものではありません。
患者さんが、
「人にも紹介したい」
「同じ悩みの人に教えたい」
「先生に感謝を伝えたい」
と思える体験を提供することが前提です。
丁寧に話を聞く。
施術前後の変化を共有する。
説明をわかりやすくする。
予約や会計をスムーズにする。
院内を清潔に保つ。
無理な通院提案をしない。
こうした積み重ねが口コミにつながります。
AIDMA・AISASとカスタマージャーニーの違い
前回解説したカスタマージャーニーと、AIDMA・AISASはよく似ています。
カスタマージャーニーは、患者さんが不調を感じてから予約・来院・継続するまでの行動や心理、接点を具体的に整理するものです。
一方、AIDMA・AISASは、人が認知から行動に移るまでの一般的な心理モデルです。
簡単に言えば、
AIDMA・AISASは、患者行動を理解するための基本的な型。
カスタマージャーニーは、自院の患者さんに合わせて具体化した地図。
と考えるとわかりやすいでしょう。
鍼灸院では、AIDMA・AISASを参考にしながら、実際の患者さんがどのように自院を知り、何を検索し、何を決め手に予約したのかを確認することが重要です。
鍼灸院のSEOにAISASを活かす方法
AISASで特に重要なのが、Searchの段階です。
患者さんは、SNSや紹介で院を知った後に、検索によって情報を確かめます。
そのため、自院名で検索されたときに何が表示されるかを確認しておく必要があります。
院名検索で確認したい項目
Googleビジネスプロフィールが表示されるか。
住所や電話番号が正しいか。
営業時間が最新か。
ホームページが表示されるか。
口コミの内容はどうか。
院内や先生の写真があるか。
SNSアカウントが見つかるか。
院名を知らない患者さんは、症状や地域名で検索します。
たとえば、
「京都 肩こり 鍼灸」
「自律神経 鍼灸 京都」
「産後 腰痛 鍼灸」
「美容鍼 むくみ 京都」
「スポーツ障害 鍼灸院」
などです。
自院が強みとしている症状や患者層に合わせて、症状別ページや記事を用意しましょう。
SNS投稿から検索へつなげる
SNSだけで予約を完結させようとすると、発信内容が売り込み中心になりやすくなります。
SNSの役割は、認知や興味を生み出し、検索やホームページ閲覧につなげることでもあります。
たとえば、Instagramで、
「夕方になると首肩が重くなる人に多い3つの習慣」
という投稿をします。
興味を持った人がプロフィールを見て、院名を検索します。
Googleマップで口コミを確認し、ホームページの肩こりページを読みます。
その後、LINEから予約します。
この流れを想定するなら、
SNSプロフィールに何の院かを書く。
ホームページへのリンクを設置する。
GoogleマップとSNSの情報を統一する。
関連する症状ページを用意する。
予約方法をわかりやすくする。
といった整備が必要になります。
口コミは「共有」であり、次の患者さんの入口になる
AISASの最後にあるShareは、鍼灸院集客において非常に重要です。
鍼灸は、初めての人にとって不安を感じやすい施術です。
そのため、実際に施術を受けた患者さんの声が安心材料になります。
たとえば、
「鍼が初めてでしたが、事前に丁寧な説明があり安心できました」
「肩こりだけでなく、睡眠や生活習慣についても聞いてもらえました」
「料金や通院の目安をわかりやすく説明してもらえました」
といった口コミは、同じ不安を持つ新規患者さんの背中を押します。
ただし、口コミを過度に誘導したり、良い評価だけを求めたりするのではなく、患者さんが率直な体験を共有できる環境を整えることが大切です。
AIDMA・AISASのよくある誤解
誤解1:すべての患者さんが順番どおり進む
患者さんが必ず、
認知
興味
検索
予約
共有
の順番で進むとは限りません。
紹介を受けて、ほとんど検索せず予約する人もいます。
SNSを何ヶ月も見続けてから予約する人もいます。
一度来院した後に口コミを読み直す人もいます。
AIDMA・AISASは、患者行動を理解するための型であり、絶対的なルールではありません。
誤解2:認知を増やせば予約も増える
SNSの閲覧数やフォロワーが増えても、予約につながるとは限りません。
認知後に検索されたとき、料金や施術内容がわからなければ離脱します。
興味を持っても、予約方法が複雑なら行動に移れません。
認知だけでなく、検索・比較・予約までの導線を整える必要があります。
誤解3:毎回の投稿に予約案内が必要
すべての投稿に強い予約案内を入れると、売り込みが多い印象になることがあります。
認知のための投稿。
興味を深める投稿。
不安を減らす投稿。
予約につなげる投稿。
役割を分けることが大切です。
誤解4:口コミ数だけ増やせばよい
口コミの数は重要な要素ですが、内容や院の実態との一致も大切です。
ホームページの説明と口コミの印象が大きく違うと、患者さんは不安になります。
日々の患者体験を整えた結果として、口コミが生まれる状態を目指しましょう。
今日からできる実践ポイント
まず、自院が患者さんにどのように知られているかを確認してみましょう。
看板。
Google検索。
Googleマップ。
Instagram。
X。
家族や知人からの紹介。
地域のイベント。
ほかの医療・健康関連施設からの紹介。
次に、患者さんが興味を持った後に、どこで詳しい情報を調べるかを確認します。
院名をGoogleで検索したとき、必要な情報が表示されるか。
ホームページで対応症状や料金がわかるか。
先生の顔や考え方が伝わるか。
口コミに来院前の不安を解消する内容があるか。
予約ボタンがすぐに見つかるか。
さらに、実際の新規患者さんに、
「当院を知った後、予約までに何を見ましたか」
と聞いてみてください。
「Instagramで知って、Google口コミを見ました」
「知人から聞いて、ホームページで料金を確認しました」
「症状の記事を読んでから院名を検索しました」
といった答えが得られるかもしれません。
実際の患者行動を知ることで、どの媒体を改善すべきかが見えてきます。
まとめ
AIDMAとAISASは、患者さんが鍼灸院を知ってから予約するまでの心理や行動を整理するためのマーケティング用語です。
AIDMAは、
Attention:知る
Interest:興味を持つ
Desire:受けたいと思う
Memory:記憶する
Action:予約する
という流れです。
AISASは、
Attention:知る
Interest:興味を持つ
Search:検索する
Action:予約する
Share:体験を共有する
という流れです。
現代の鍼灸院集客では、患者さんがSNSや紹介で院を知った後、Google検索や口コミで情報を確認することが一般的です。
さらに、施術を受けた患者さんの口コミが、次の患者さんの認知や興味につながります。
そのため、鍼灸院には、
存在を知ってもらう発信。
自分に関係があると感じてもらう情報。
検索・比較に答えるホームページ。
迷わず予約できる導線。
共有したくなる患者体験。
を一つの流れとして設計する視点が必要です。
マーケティングは、患者さんを無理に予約へ誘導することではありません。
患者さんが不安や疑問を一つずつ解消し、自分に合った鍼灸院を納得して選べるように情報を整えることです。
次回は、どれだけ良い鍼灸院でも、まず知ってもらわなければ選ばれないという視点から、
「認知」
について解説します。
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