はじめに|お灸の歴史を紐解く「養生訓」とは?
「腹八分目に医者いらず」
この言葉で知られる貝原益軒(かいばら えきけん/1630–1714)は、江戸時代の儒学者・本草学者として知られ、養生や健康管理に深い関心を持っていました。
晩年の1713年に著した代表作『養生訓』は、日常生活の中で心身を整える方法=“養生”を、庶民にもわかりやすく伝えた健康バイブルです。
そしてその中には、お灸の重要性が詳細に記されており、東洋医学的セルフケアの原点とも言える内容が含まれています。
養生訓とお灸|“灸法”の項目に見る具体的な記述
『養生訓』では、「灸法」という章立てでお灸の効能や実践法について解説されています。
その内容は実に具体的で、以下のようなポイントが紹介されています:
🔹 艾(もぐさ)の製法と選び方
- 艾(ヨモギ)の葉の質が重要
- 越中(現在の富山県周辺)の艾が良質であると記載
🔹 お灸の場所とサイズ
- 足三里への施灸が特に推奨されており、日々の健康維持に役立つと強調
- 1度の施術での灸の数は控えめにすることが勧められている
- 熱さが過ぎる場合の対処法も解説されており、火傷や痛みを防ぐ工夫が語られている
これらは単なる技法ではなく、「養生=予防的な健康管理」としてのお灸の位置づけを強く反映した内容です。
養生訓の特徴|庶民に向けた“啓蒙の言葉”
『養生訓』のもう一つの大きな特徴は、仮名交じり文で書かれた読みやすい文章であったこと。
当時の医書は漢文が多く、専門家向けのものが主流でしたが、益軒はこれを庶民のための養生書として仕上げました。
- 難解な言葉を避ける
- 日常生活に即した例えや実践方法を重視
- 精神的修養や道徳観と健康を結びつける構成
このような構成により、『養生訓』は多くの人々に読み継がれ、現代のセルフケア意識や和の健康観にも影響を与え続けています。
現代の私たちへ|『養生訓』から学べるお灸の知恵
現代では、火を使わないお灸や温灸器なども登場し、お灸はより身近な存在になっています。
そんな今だからこそ、貝原益軒が300年以上前に伝えた“お灸の本質”を振り返る意義があります。
- お灸は病気を治すためだけでなく、毎日の体調管理=養生に用いるもの
- シンプルだけれど深い、「熱さを感じる=刺激」という自然な感覚を大切に
- 体質や年齢に応じて“控えめに行う”という慎重さも大事
まとめ|貝原益軒の視点は、今なお生きている
『養生訓』における灸法の記述は、単なる施術マニュアルではなく、東洋医学の思想と、日々の暮らしをつなぐ“知恵”です。
貝原益軒が目指したのは、生涯を健やかに過ごすためのセルフケア文化の普及でした。
忙しい現代だからこそ――
一日にひとつ、自分の身体と向き合う時間として、「足三里にお灸をすえる」。
そんな静かな習慣を、今日からはじめてみませんか?
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