不妊治療中に鍼灸を併用する人はいますが、鍼灸で妊娠や出生の可能性が高まると確実にいえる段階ではありません。体外受精などの研究には異なる結果があり、出生への効果はなお不確かです。鍼灸を受けるかどうかで自分を責める必要はありません。検査や治療の予定を優先し、併用を考えるときは担当医に伝えてください。
不妊治療と鍼灸の研究でわかること
米国生殖医学会の胚移植ガイドラインは、移植前後の鍼灸について研究結果が一致せず、体外受精で出生率が改善する一貫した根拠はないとまとめています。2026年の鍼灸関連の介入(鍼・電気鍼・鍼を刺さない経皮的刺激)を対象とした42試験のレビューでは、臨床妊娠率や着床率が高いという結果がある一方、出生率への影響は不確かで、主な結果のエビデンスの確実性は非常に低いと評価されました。「妊娠反応が出た」「臨床妊娠した」と「赤ちゃんが生まれた」は別の結果です。研究の一部に肯定的な結果があっても、個人の妊娠を予測したり、特定の施術回数を勧めたりはできません。
また、卵子や精子の質が改善する、子宮の血流が増えて着床しやすくなる、ホルモンが整うという説明は、個々の研究で検討されていても、患者ごとの治療効果として確立したものではありません。原因や治療段階によって必要な検査と対応は異なります。
鍼灸を受ける前に確認したいこと
- 治療予定を優先する:採卵・移植・薬の服用などの予定を鍼灸のために変更しないでください。併用を希望する場合は、不妊治療の担当医に施術の内容と時期を相談してください。
- 費用と負担を考える:施術を続ける回数や期間に、妊娠・出生のための確立した推奨値はありません。時間、費用、体調への負担を含めて自分で選べます。
- 安全面を伝える:妊娠の可能性、出血しやすさ、服用中の薬、感染症の心配などは施術前に伝えてください。鍼の施術には痛み、出血、感染などのリスクがあります。施術後に強い痛み、発熱などがあれば医療機関に相談してください。
ストレスへの対処や気持ちを話す機会が必要なら、担当医、看護職、心理職や公的な相談先に相談できます。鍼灸で気分が楽になると感じる人がいても、それを妊娠率の改善と同一視しないでください。厚生労働省は不妊に関する情報と相談・支援の窓口を案内しています。
検査や治療の相談を優先したいとき
妊娠を希望していて検査や治療の時期を迷う場合、月経の異常や治療中の体調変化がある場合は、鍼灸だけで様子を見ず産婦人科などの医療機関に相談してください。妊娠の可能性があるときの下腹部痛・性器出血は速やかに医療機関へ相談し、突然の激しい腹痛や失神などがあれば救急受診してください。精液検査を含め、必要な評価はパートナーと相談して進めることがあります。原因を「冷え」や努力不足だけで説明しないことが大切です。
よくある質問
体外受精の移植前後に鍼灸を受ければ出生率は上がりますか?
出生率が上がると一貫して示されていません。検討する場合も、移植の予定や指示を優先し、担当医と相談してください。
週に何回、何か月続ければ妊娠しやすくなりますか?
妊娠や出生を目的とした、確立した施術回数・期間はありません。研究から一律の頻度を決めることはできません。
鍼灸を受けないと不妊治療で不利になりますか?
鍼灸を受けないことで妊娠の機会を失うと判断できる根拠はありません。受けるかどうかは、根拠、費用、体調、希望を踏まえて選べます。






