看護師の役割と重要性—医療現場で求められる専門職

はじめに

「看護師はどんな仕事をしているの?」「医師と何が違うの?」「どうすれば看護師になれるの?」
医療の現場において、看護師は患者と最も長い時間をともにし、医師・リハビリ職・鍼灸師・セラピストなど、多職種をつなぐハブのような存在です。

看護師は、単に「医師の補助」をするだけではありません。
身体のケア、心のケア、家族へのサポート、退院後の生活指導、そしてチーム医療のコーディネートまで幅広く担う専門職です。

この記事では、看護師とはどのような職業か、その歴史・役割・業務内容・資格取得の流れ・やりがいと課題までをわかりやすく解説します。
医療やケアに関わる方(鍼灸師・セラピスト・介護職など)にとっても、看護師との連携を考えるヒントとしてご活用いただけます。


看護師とは?医療現場を支える専門職

看護師とは、医療の最前線で患者の回復・健康維持を支え、医師や各専門職と連携しながらケアを提供する国家資格の医療従事者です。

  • 症状の観察・記録
  • 処置や投薬など医療行為の補助
  • 日常生活のサポート(食事・排泄・清潔保持など)
  • 退院後に向けた生活指導
  • 患者・家族の不安を和らげる精神的サポート

看護師は病院・クリニック・介護施設だけでなく、訪問看護・在宅医療・学校・産業保健(企業内の健康管理)など、地域における「暮らしの医療」にも欠かせない存在です。

看護の基本理念は「人間の尊厳を守るケア」。
ただ病気を診るのではなく、患者一人ひとりの生活背景・価値観・不安にも目を向ける“全人的ケア”が重視されます。これは東洋医学や鍼灸が大切にする「心身一如」の考え方と共通しています。


看護師の歴史と発展

近代看護のはじまり:フローレンス・ナイチンゲール

近代看護の礎を築いたのは、19世紀イギリスのフローレンス・ナイチンゲールです。
彼女はクリミア戦争において過酷な戦地の衛生環境を改善し、負傷兵の死亡率を大幅に低下させました。
この活動を通じて「看護は献身ではなく科学である」「衛生・観察・管理は命を救う」という考えが確立され、看護は専門職として社会に認められていきました。

ナイチンゲールは看護師の教育制度も整え、看護師を「医療チームの一員」として確立した人物でもあります。

日本における看護の確立

日本では、近代医学の導入とともに看護教育が始まり、戦後の医療制度の整備を経て、1948年に「保健師助産師看護師法」が制定。
看護師は国家資格として明確に位置づけられ、医療現場で不可欠な専門職となりました。

現代では、救急医療・集中治療・在宅ケア・緩和ケアなど、より専門的で高度な分野にも看護師が積極的に関わっています。


看護師の役割と業務内容

看護師の役割は大きく5つにまとめることができます。これは医療チームで働く他職種(鍼灸師、理学療法士、柔道整復師、栄養士など)にとっても、連携時にとても重要な視点です。

1. 患者のケアと状態観察(アセスメント)

  • 体温・血圧・脈拍・呼吸数などのバイタルサインをチェック
  • 痛みやしびれ、呼吸状態、意識レベルの変化などを観察
  • 小さな変化を早期に医師へ共有し、悪化を防ぐ

看護師は「患者の状態が今どうなっているか」を最も近くで把握している存在です。

2. 治療や処置の補助

  • 採血、点滴管理、投薬管理
  • 包帯交換・創部の消毒などの創傷ケア
  • 手術室・救急外来・ICUなどでの医師のサポート

これらは「医師の指示のもと」「安全性に基づいて」行われます。正確さ・迅速さ・清潔管理が必須です。

3. 患者・家族への説明と生活指導

  • 退院後の過ごし方
  • 薬の飲み方や副作用への備え
  • 食事や睡眠、リハビリのポイント
  • 再発予防のセルフケア

この指導は、患者が「病院の外で自分の体を守れるようにする」ための大きなサポートになります。鍼灸など院外ケアとのつながりも生まれるポイントです。

4. 精神的サポート

  • 不安、恐怖、孤独感への寄り添い
  • 病気や手術に対する心の準備を手伝う
  • 家族の心理的負担をやわらげる

身体の回復には心の安定が欠かせない、という視点を看護師は常に持っています。これは統合医療的な視点とも共鳴します。

5. チーム医療のコーディネート

  • 医師、薬剤師、リハビリスタッフ、栄養士、ケースワーカーなどとの情報共有
  • カンファレンス(症例検討)での報告と提案
  • 患者にとって最適なケアプランの調整

看護師は医療チームの“ハブ”であり、現場のつなぎ役です。
鍼灸師として医療と連携する場合も、まず看護師が窓口になることは多いです。


看護師の具体的な業務例

ここからは日常的に行われる業務をもう少し具体的に見ていきます。

1. バイタルサインのチェック

体温・血圧・脈拍・呼吸数などを定期的に測定し、異常があればすぐに医師へ報告します。
これは急変を防ぐ最前線の仕事であり、入院患者の安全を守る要です。

2. 投薬・点滴・注射の管理

薬の種類・量・タイミングを正確に管理します。
点滴スピードや副作用の有無をこまめに観察することは、患者の命に直結する非常に責任の重い業務です。

3. 傷の処置・包帯交換

術後の創部ケアや外傷の処置を行い、感染を防ぎます。
清潔管理・観察・記録が一体となった専門性の高い仕事です。

4. 食事・排泄・清潔保持のサポート

自力で動けない患者には、食事介助、オムツ交換、体位変換、清拭などのケアも必須です。
身体的ケアを通して、褥瘡(床ずれ)や筋力低下を防ぎ、 dignified(尊厳のある)生活を守ります。

5. リハビリ・ADL(日常生活動作)支援

理学療法士・作業療法士と協力しながら、ベッド上での起き上がり練習、移乗介助、立位保持の練習などをサポートします。
「早く動けるようになる」ことは体力回復だけでなく、退院後の生活の自立にもつながります。


看護の効果と、患者にとってのメリット

看護師の存在は、目に見える医療行為以上の価値を生みます。

1. 回復を早める・悪化を防ぐ

日々の観察とケアにより、異変を早期にキャッチして重症化を防ぎます。
これは入院期間の短縮や再入院の予防にも役立ちます。

2. 安心感・心理的な安定をもたらす

患者は「不安だからナースコールを押す」ことがあります。
傾聴と説明を繰り返すことで、患者は安心し、治療に前向きになりやすくなります。メンタルの安定は痛みの感じ方や回復力にも影響します。

3. 退院後・在宅生活の質を上げる

食事、薬の管理、リハビリの仕方、注意すべき症状などをわかりやすく説明することで、自宅に戻った後の「その人らしい生活」を支えます。
これは在宅医療・訪問鍼灸・訪問リハなど多職種ケアにもつながります。

4. チーム医療の質を底上げする

看護師は、現場の状況と患者の声をまとめて医師やスタッフに共有する役割を担います。
その情報共有が治療計画の改善につながり、最終的には患者の満足度やQOL(生活の質)向上にも結びつきます。


看護師になるには?資格取得の流れ

「看護師」は国家資格です。主な流れは次のとおりです。

  1. 看護系の学校に進学
    • 看護大学(4年)
    • 短期大学・専門学校(おおむね3年)
      解剖学・生理学・病態生理・薬理学などの医療知識に加え、看護技術やコミュニケーションも学びます。
  2. 臨地実習(病院・施設での実習)
    実際の医療現場に入り、患者と接しながらケア技術・安全管理・倫理観を身につけます。
    「机上の学び」を「現場の看護」へとつなげる重要なステップです。
  3. 看護師国家試験の受験
    卒業見込み後、国家試験を受験します。合格すると看護師免許が得られます。
  4. 看護師免許の取得・就業開始
    免許取得後は、病院・クリニック・介護施設・訪問看護など、さまざまな領域で働くことができます。
  5. 継続教育と専門資格
    看護はアップデートが欠かせない専門職です。
    救急看護・がん看護・訪問看護・緩和ケアなど、特定分野に特化した「専門看護師」「認定看護師」を目指す道もあります。

看護師として働くうえでの注意点・課題

1. 身体的・精神的な負担が大きい

夜勤・交代勤務・急変対応など、心身ともに緊張状態が続く場面も多い仕事です。
ストレスケア・セルフケア・チーム内のサポート体制が重要になります。

2. コミュニケーション能力が必須

患者や家族はもちろん、多職種スタッフとも連携しなければなりません。
患者の不安を受け止め、わかりやすく説明し、信頼関係を築ける力が求められます。

3. 高い倫理観と責任感

看護師は、患者の命・プライバシー・尊厳に直接関わります。
正確な処置・記録管理・情報管理など、倫理的・法的な配慮が欠かせません。


まとめ|看護師は「医療の現場」と「患者の生活」をつなぐ存在

看護師は、医師とともに治療を支えるだけでなく、患者のからだと心の両方に寄り添い、回復・予防・生活支援までを担う専門職です。
日常の観察から処置の補助、精神的なケア、リハビリのサポート、退院後のアドバイスまで、看護師の仕事は医療のすべての場面に関わっています。

また、チーム医療において看護師は中心的な役割を果たし、鍼灸・リハビリ・介護など他職種と協力しながら、患者にとって最善のケアを提供します。

看護師という職業は大きな責任と負担を伴いますが、そのぶん「人の力になれる」「回復のプロセスに寄り添える」という大きなやりがいがあります。
医療の質と患者の安心感を支えているのは、現場で日々向き合っている看護師たちなのです。

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