PSFSとは?鍼灸師が「困っている生活動作」を記録する方法とNRSとの違い

PSFS(Patient-Specific Functional Scale)は、患者さん自身が選んだ「困っている動作」を、どの程度行えるかで評価する尺度です。原版では、0はその動作を行えない状態、10は症状や問題が起こる前と同じ程度に行える状態を表します。痛みの強さとは別に、生活のどの場面が困っているかを経過記録へ残す入口になります。点数だけで診断や鍼灸の効果を判断するものではありません。

PSFSと痛みのNRSは何が違う?

痛みのNRSは痛みの強さを尋ねるのに対し、PSFSは患者さんが選んだ動作を行う能力について尋ねます。PSFSは高い点数ほど元の状態に近い方向です。両方とも0〜10を使うことがあるため、記録には尺度名と、何を尋ねた点数かを明記します。

痛みが変わらなくても動作の行いやすさが変わる場合や、その逆もあります。一つの点数で全部を表そうとせず、痛みの記録にはNRSで痛みと生活への影響を記録する方法を併せて参考にしてください。

患者さんが大切にしている動作を具体化する

Shirley Ryan AbilityLabが公開する原版の説明用紙では、症状や問題によって行えない、または行いにくい重要な動作を最大3つ挙げ、各動作を評価します。次は、その考え方を参考にした当サイトの聞き取り案です。正式な日本語版質問票の転載ではありません。

  • 「今、生活の中で行いにくくなったことは何ですか」
  • 「その中で、ご自身にとって大切な動作を教えてください」
  • 「どのくらいの時間、距離、重さなどを想定していますか」

例えば「歩く」だけでなく「自宅から近所の店まで、いつもの経路を歩く」と整理すると、次回も同じ内容を尋ねやすくなります。活動の選択は施術者が一方的に決めず、本人に確認します。距離などの細かさは、患者さんが理解できる範囲にとどめます。

生活動作の記録例と点数のまとめ方

次は説明のための架空例です。実際の患者さんや施術結果を示すものではありません。

動作1
自宅から近所の店まで、いつもの経路を歩く:4点
動作2
いつもの椅子で30分間、机に向かって作業する:5点
動作3
普段使う買い物袋を持って、自宅の階段を上がる:3点

原版用紙の総合点は、各動作の点数の合計を動作数で割った平均です。この架空例では(4+5+3)÷3=4点になります。ただし、平均だけではどの動作が変化したかが見えにくいため、個別の点数と動作の内容も残します。

日時、評価した動作の文言、点数に加え、補助具の使用、途中の休憩、動作時の痛みなど、解釈に必要な状況も別欄に記すと振り返りやすくなります。この補足記録は当サイトの実務上の提案です。本人が行える程度を尋ねるもので、点数を付けるために危険な動作を無理に実行させません。

再評価は同じ動作で、点数の変化を急いで結論しない

原版用紙の再評価では、前回挙げた動作を読み返し、同じ項目について点数を尋ねます。経路、荷物、補助具などが変わっていれば、その違いも残します。新しい困りごとが出た場合は別に記録し、違う動作の点数をそのまま前回と比較しないようにします。

何点上がれば「改善」と言えるかを、すべての患者さんに一律に当てはめることはできません。測定誤差を超える変化や、本人にとって意味のある変化の目安は、対象集団や研究条件によって異なります。数字の変化とともに、本人がどの場面で変化を感じたかを確認します。

点数が上がっても、自然な経過、服薬、他の治療、生活環境などの影響を切り分けられないため、それだけで鍼灸による効果とは言えません。また、患者さんごとに選ぶ動作が違うので、点数だけで別の患者さん同士を順位付けする使い方は避けます。

PSFSを使うときの限界と安全上の注意

PSFSは患者さんの報告を記録するもので、筋力などの検査値、診断、施術の適否判断を置き換えません。新しい症状や急な機能低下など、診察が必要と考えられる変化があれば、点数の再評価だけで済ませず医療機関への相談を勧めます。必要な診察・治療を後回しにしたり、服薬の中止・変更を指示したりしません。

実際に尺度として導入する際は、対象に合う版、説明文、実施方法、日本語版の検証状況や利用条件を確認します。この記事の聞き取り案を、検証済みの正式な日本語版PSFSと表示しないでください。本人の希望を施術方針へつなげる対話は、共同意思決定(SDM)の声かけと記録例も参考になります。

よくある質問

PSFSの10点は「痛みが最も強い」という意味ですか?

違います。原版のPSFSでは、10は問題が起こる前と同じ程度に動作を行える状態です。痛みの尺度と混同しないよう、尺度名と評価する内容を説明します。

平均点だけ保存してもよいですか?

平均点に加え、患者さんが選んだ動作と各点数を残します。同じ平均でも、どの動作に困っているかは異なるためです。

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