PICO(ピコ)は、臨床の疑問を「誰に・何を行い・何と比べ・何を評価するか」の4項目で整理する枠組みです。特に、治療やケアの違いを調べたいときに役立ちます。鍼灸師が「この施術は役立つのだろうか」と感じたら、まず調べたい問いを具体化しましょう。PICOを作るだけで、効果や安全性が分かるわけではありません。
PICOの4項目をどう書く?
- P:Population/Patient/Problem(対象者・問題)
- どのような人の、どのような問題を調べるか。年齢層、症状や病気、期間など、問いに必要な条件を書きます。
- I:Intervention(介入)
- 何を行うか。鍼治療、運動療法、患者さんへの説明など、調べたいケアを具体化します。併用するケアがある場合も記します。
- C:Comparison/Comparator(比較対象)
- 何と比べるか。通常ケア、別の治療、模擬鍼などを区別します。「何もしない」と「通常ケア」は同じ条件ではありません。
- O:Outcome(評価する結果)
- 何が変わるかを調べるか。痛み、生活機能、生活の質、有害事象など、患者さんに関係する結果を選びます。いつ測るかも添えます。
最初から項目を細かくしすぎず、知りたいことに直結する条件から書いてみてください。Cochraneのハンドブックでも、レビューの問いを明確にする際にPICOを用います。
鍼灸の臨床疑問をPICOにする例
次は問いの作り方を示す架空の練習例です。特定の治療の効果や推奨を示すものではありません。
- P:慢性腰痛のある成人
- I:通常ケアに鍼治療を追加する
- C:通常ケアのみを行う
- O:8週間後の痛み・生活機能と、その期間中の有害事象
一文にすると、「慢性腰痛のある成人で、通常ケアに鍼治療を追加する場合は、通常ケアのみの場合と比べ、8週間後の痛み・生活機能と、その期間中の有害事象にどのような違いがあるか」となります。8週間は練習のために置いた期間で、標準的な施術期間を意味しません。
比較対象を模擬鍼に変えれば、調べる問いも変わります。通常ケアに追加する違いを調べる問いと、模擬鍼との違いを調べる問いを混ぜず、見つけた研究が自分の問いに合っているかを確認します。
PICOから文献検索へ進む3つの手順
- 一文の問いを残す。対象者、介入、比較、結果と測定時点を書きます。迷った項目は未定と記し、調べながら整理します。
- 中心となる用語を選ぶ。上の例なら「慢性腰痛」「鍼治療」が出発点です。英語の候補として「chronic low back pain」「acupuncture」をメモし、検索するデータベースの用語や同義語も確認します。これだけで網羅的な検索になるわけではありません。
- 見つかった文献を問いと照合する。比較群、対象者、評価項目、測定時点を本文で確かめます。検索日、データベース、検索語と、採用・除外した理由を残すと、後で調べ直しやすくなります。
P・I・C・Oのすべてを、毎回検索欄に入れる必要はありません。比較対象や評価項目は、論文のタイトル・抄録や索引に十分書かれていないことがあり、条件を増やしすぎると関連文献を見落とす場合があります。Cochraneの検索指針も、問いの全要素を機械的に検索へ入れることを勧めていません。系統的レビューを制作する場合は、この簡単な手順だけで済ませず、図書館員や文献検索の専門家に相談します。
見つかった論文を、そのまま施術の答えにしない
PICOは、問いを整理するための道具です。論文が見つかった後は、研究方法、結果の確かさ、施術条件、対象者の違いを確認する必要があります。具体的な点検方法は、鍼灸研究論文の読み方と「効果あり」を確かめる5つの視点で解説しています。
文献の結果と、患者さんの状態・希望・現在受けている医療を合わせて考えます。PICOや検索結果を理由に、必要な診察や治療を後回しにしたり、服薬の中止・変更を勧めたりしません。本稿は文献を調べる方法の説明であり、個別の診断や施術の適否を判断するものではありません。
よくある質問
PICOはすべての疑問に使えますか?
特に介入の違いを調べる問いに適しています。患者さんの体験、予後、診断検査などの問いは、目的に合う別の整理や検索方法が必要になることがあります。4項目に無理に当てはめることを目的にしないでください。
比較対象が決まらないときはどうしますか?
未定と記して、何との差を知りたいのかを考えます。通常ケア、別の治療、模擬鍼では問いが異なります。文献を読んで条件を整理した場合は、問いを変更した理由も残します。
検索して論文が出ない場合、効果がないということですか?
そうとは限りません。検索語、検索先、絞り込み条件によって見落とす場合があります。検索で見つからなかったことと、効果がないことを区別し、条件を見直したうえで、確認できていない点を明示します。






