ホットフラッシュの原因と対策|更年期の不快な症状を和らげる方法

はじめに|急なほてり・発汗は更年期のサインかも

「急に顔が熱くなる」「夜中に汗びっしょりで目が覚める」「そのあと急に寒気がくる」──。
これらは典型的なホットフラッシュ(Hot Flash/Hot Flush)の症状です。
女性の更年期(おおよそ45〜55歳)に多く見られ、生活の質(QOL)を低下させる代表的な不定愁訴のひとつです。
本記事では、ホットフラッシュの原因・メカニズム・対策・鍼灸によるケア方法
をわかりやすく解説します。


1. ホットフラッシュとは?

ホットフラッシュとは、体温の急上昇と発汗を伴う一過性のほてりのこと。
多くは顔・首・胸に現れ、数秒〜数分間続きます。

主な症状

  • 顔や上半身のほてり・熱感
  • 大量の発汗(特に夜間)
  • 動悸・心拍数上昇
  • 発作後の寒気や倦怠感
  • 睡眠中の中途覚醒・不眠

これらは1日数回〜数十回現れ、ストレス・気温・飲酒・疲労などで悪化します。


2. 原因|ホルモンの変化と自律神経の乱れ

ホットフラッシュの主な原因は、更年期における女性ホルモン(エストロゲン)の急激な減少です。

(1) エストロゲン低下と体温調節の乱れ

  • エストロゲンは、脳の視床下部(体温調節中枢)に作用して体温を一定に保ちます。
  • 更年期になるとその調整機能が乱れ、「体が熱い」と誤認識して発汗や血管拡張が起こります。

(2) ストレス・自律神経の過緊張

ストレス・不安・睡眠不足により、交感神経優位(緊張状態)が続くと、血管が過剰に反応しやすくなります。
その結果、ほてりや動悸が強まることがあります。

(3) 生活・環境要因

  • カフェイン・アルコール・香辛料の摂取
  • 喫煙・過度なダイエット
  • 室温の変化・厚着
    これらもホットフラッシュを誘発する要因です。

3. 対策とセルフケア方法

ホットフラッシュの改善には、「生活習慣+ストレスケア+医療的治療」の3本柱が基本です。

① 生活習慣の改善

対策ポイント
冷却対策首元を冷やす、携帯用扇子や冷却タオルを常備
衣服の工夫通気性・吸汗速乾の素材、重ね着で温度調整
食事の見直しカフェイン・アルコール・辛味を控える。大豆製品(イソフラボン)を取り入れる
睡眠リズム就寝・起床時間を一定に。就寝前のスマホ使用を控える

② ストレス・メンタルケア

  • 深呼吸・瞑想・ヨガ:副交感神経を優位に
  • 趣味や交流:孤立を防ぎ、心の安定をサポート
  • 十分な睡眠:夜間のホットフラッシュ軽減に効果的

③ 医療的治療(医師相談の上で)

  • ホルモン補充療法(HRT):エストロゲンを補う治療。症状の重い場合に有効。
  • 漢方薬:加味逍遥散(かみしょうようさん)や当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)などが処方されることも。
  • 薬物療法:SSRI(抗うつ薬)や降圧薬が一部で有効例あり。

4. 鍼灸によるアプローチ|“巡り”を整えて体のリズムを回復

鍼灸は、ホットフラッシュのような自律神経とホルモンのアンバランスに対して、体質改善を目的に用いられます。

東洋医学的な見立て

  • 更年期は「腎虚(じんきょ)・陰虚(いんきょ)」によって、体内の“水”が不足し“熱”が上昇すると考えます。
  • 鍼灸では、気血の巡りを整え、熱の偏りを下げるよう働きかけます。

よく使われる経穴(ツボ)

ツボ名効果・位置
三陰交(さんいんこう)ホルモンバランス調整・冷え・のぼせに
太谿(たいけい)腎の働きを補い、ほてりを鎮める
合谷(ごうこく)自律神経調整・緊張緩和
百会(ひゃくえ)頭の熱感・のぼせ・不眠に
内関(ないかん)ストレス・動悸・不安感の緩和

セルフケアでは、指で軽く押す/台座灸で温めるのが安全です。
熱感が強い時は冷却→翌日に灸など、体調に合わせて調整しましょう。


5. まとめ|焦らず、体のリズムを取り戻す

ホットフラッシュは「更年期の自然な変化」ですが、放置せず体の声に耳を傾けることが大切です。

  • エストロゲン低下による体温調節の乱れ
  • 自律神経とストレスの関係
  • 生活習慣・鍼灸・医療の併用

これらを理解し、体質とライフスタイルに合わせたケアを行うことで、症状は少しずつ落ち着いていきます。
焦らず、「今の自分を整える時間」として捉えましょう。

※体調や症状が強い場合は、婦人科または鍼灸師に相談してください。


FAQ

Q. ホットフラッシュはいつまで続く?
A. 一般的に1〜5年ほどで落ち着きますが、個人差があります。

Q. サプリメントは効果がありますか?
A. イソフラボン・ブラックコホシュなどに一定の有効性が報告されていますが、服用前に医師・薬剤師に相談を。

Q. 鍼灸はどのくらいの頻度で受けるとよい?
A. 週1回から始め、体調に応じて2〜3週に1回へ。3か月程度で体の変化を感じる人が多いです。

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