鍼灸の経過観察で痛みを記録するなら、NRS(数値評価尺度)は患者本人が痛みの強さを0〜10で表す簡便な方法です。ただし、数字だけでは痛みの原因や生活上の困りごとは分かりません。どの痛みを、いつの状態として尋ねたかをそろえ、睡眠・仕事・歩行などへの影響も一緒に残すことが大切です。
NRSとは?0〜10の数字で痛みの強さを尋ねる
NRS(Numerical Rating Scale)は、0を「痛みなし」、10を「想像できる最も強い痛み」などとして、本人に現在の痛みの強さを選んでもらう方法です。言葉で答えてもらうこともできます。VAS(視覚的アナログ尺度)は線上の位置で痛みを示す方法で、NRSとは記録方法が異なります。
質問するときは「いまの腰の痛みを、0が痛みなし、10が想像できる最も強い痛みとして表すと何点ですか」のように、部位・時点・両端の意味を明確にします。動いたときの痛みを知りたいなら、「歩いたとき」など場面も指定します。
経過を比べるために、何を記録する?
- 痛む部位と、安静時・動作時など尋ねた場面
- 「今」「過去1週間の平均」など、評価した時間の範囲
- 患者本人が答えたNRSの値と記録日
- 睡眠、仕事、家事、歩行など、本人が困っている活動とその変化
例えば「10月1日、右腰の歩行時の痛みNRS 6/10(本日)、駅まで歩く途中で休憩が必要」と記録します。次回も同じ部位・場面・時間の範囲で尋ねれば、変化を読み取りやすくなります。NRSは患者の申告なので、SOAP式カルテの主観的情報の記録方法と合わせて確認できます。
数字だけで施術の効果や受診の要否を決めない
NRSが同じでも、活動できる範囲や痛みへの困り方は人によって異なります。逆に数値が下がっても、睡眠や歩行の支障が続く場合があります。痛みの強さと、日常活動への影響は別々に確認してください。点数の差だけで鍼灸の効果や病名を断定することはできません。
脚へ広がる強い腰痛に、新たな排尿・排便の異常や会陰部の感覚低下を伴う場合は、NRSの点数にかかわらず馬尾症候群の評価のため直ちに医療機関へつなぎます。鍼灸の経過記録は診断や必要な受診の代わりにはなりません。
よくある質問
NRSは毎回同じ点数なら変化なしと考えてよいですか?
そうとは限りません。尋ねた部位・場面・期間が同じかを確かめ、睡眠や活動への影響、本人の言葉も見て判断します。
NRSとVASは同じものですか?
どちらも痛みの強さを表す方法ですが、NRSは数字を選び、VASは線上の位置を示します。経過を比較するときは、使った方法を記録してください。






