慢性疼痛の原因と治療法—痛みのメカニズムと上手に付き合う方法を紹介

慢性疼痛とは?—原因、メカニズム、治療法、そして痛みとの付き合い方を徹底解説

慢性疼痛(まんせいとうつう)は、痛みが3か月以上続く状態を指し、急性痛とは異なり、身体的な損傷や病気が回復した後も痛みが続く場合が多いです。慢性疼痛は、単に体の一部が痛むだけでなく、精神的、感情的な側面にも影響を及ぼし、生活の質を大きく低下させることがあります。

慢性疼痛の原因、メカニズム、治療法について解説し、痛みとの付き合い方や対処法についても詳しく説明します。

慢性疼痛とは?

慢性疼痛とは、痛みが3か月以上持続する状態を指します。これは、病気やけがの治癒が完了しても痛みが残る、あるいは原因不明の痛みが長期間続くことを意味します。一般的に、痛みは身体の防御反応として機能し、けがや病気の回復と共に軽減されるものですが、慢性疼痛の場合、痛みの信号が持続的に脳に送られ続け、体に損傷がない状態でも痛みが感じられます。

慢性疼痛の主な症状は以下の通りです:

  • 持続的な痛み:一度に数時間から数日間続くこともあります。
  • 痛みの再発:痛みが突然再発し、波のように強弱が繰り返されることがあります。
  • 痛みの広がり:当初の痛みが発生した部位から、他の部位に痛みが広がることもあります。
  • 生活の質の低下:慢性疼痛は、生活の質を著しく低下させ、日常的な活動や仕事、社会生活に支障をきたすことがあります。

慢性疼痛の種類

慢性疼痛には、さまざまな種類があり、その原因や症状によって異なるタイプに分類されます。以下に、代表的な慢性疼痛の種類を紹介します。

神経障害性疼痛(Neuropathic Pain)

神経障害性疼痛は、神経系が損傷や障害を受けた際に発生する痛みです。脳、脊髄、末梢神経に異常が生じ、誤った痛みの信号が送られることで痛みを感じます。このタイプの痛みは、刺すような痛みや焼けるような痛み、しびれ感を伴うことが多いです。

原因としては、糖尿病性神経障害、帯状疱疹後神経痛、坐骨神経痛、外傷による神経損傷などがあります。

筋骨格系疼痛(Musculoskeletal Pain)

筋骨格系疼痛は、筋肉、骨、関節、靭帯などの損傷や炎症によって引き起こされる痛みです。このタイプの痛みは、運動や姿勢に関連して悪化しやすく、長期間続くことがあります。

代表的な例として、慢性腰痛関節炎筋膜痛症候群などが挙げられます。

内臓性疼痛(Visceral Pain)

内臓性疼痛は、内臓の病気や障害によって引き起こされる痛みです。胃腸や膀胱、子宮などの内臓器官に異常がある場合に発生し、鈍く、広範囲に広がる痛みが特徴です。

例えば、過敏性腸症候群(IBS)慢性膵炎子宮内膜症などが内臓性疼痛を引き起こします。

心因性疼痛(Psychogenic Pain)

心因性疼痛は、精神的なストレスや感情の問題が主な原因となって発生する痛みです。身体的な原因が見つからない場合もありますが、患者は確実に痛みを感じています。精神的なストレス、不安、うつ病などが関与していることが多く、治療には心理的なアプローチが必要になることもあります。

慢性疼痛の原因

慢性疼痛は、急性の痛みと異なり、体の組織が修復された後も痛みが持続します。慢性疼痛の原因は多岐にわたり、以下のような要因が考えられます。

身体的な原因

身体的な原因としては、けがや手術後の神経損傷、椎間板ヘルニア、関節炎、糖尿病、がんなどの病気が挙げられます。これらの疾患や障害が神経や筋肉に影響を与え、痛みが長期間にわたって続くことがあります。

神経系の異常

慢性疼痛は、脳や脊髄、神経が痛みの信号を過剰に送ることで発生することがあります。たとえば、脳が痛みの信号を誤って認識し、過剰に反応してしまうケースや、神経自体が損傷を受けているために痛みが続くケースがあります。

神経障害性疼痛の患者では、痛みの信号が持続的に送られ、脳が痛みを感じ続けることで、痛みが慢性化します。

心理的・精神的な要因

ストレスや不安、うつ病などの心理的要因も、慢性疼痛の発生や悪化に関与しています。感情的な苦痛が体に影響を与え、痛みを強く感じることがあります。また、慢性疼痛が心理的な問題を引き起こし、さらに痛みが悪化するという悪循環に陥ることもあります。

生活習慣と環境

座りがちな生活や運動不足、不健康な食生活、喫煙や飲酒などの生活習慣が、慢性疼痛を引き起こすリスクを高める要因となることがあります。また、長時間同じ姿勢で過ごすことが多いデスクワークやストレスの多い環境も、慢性疼痛に影響を与えることがあります。

慢性疼痛の診断

慢性疼痛の診断には、患者の詳細な病歴や症状の評価が重要です。医師は、痛みの場所や持続時間、痛みの種類(刺すような痛み、鈍い痛みなど)、日常生活への影響などを詳しく聞き取り、原因を特定しようとします。

身体検査と画像診断

痛みの原因を特定するために、身体検査が行われ、痛みのある部位の動きや反射、筋力を確認します。また、場合によってはMRICTスキャンなどの画像診断を行い、神経や筋肉、骨の状態を確認します。これにより、痛みの原因となる異常を特定することが可能です。

神経検査

神経障害性疼痛が疑われる場合、神経伝導検査筋電図を用いて、神経や筋肉の機能を調べます。これにより、神経の損傷や障害が痛みの原因かどうかを判断します。

心理的評価

慢性疼痛には、心理的要因が大きく関与している場合もあるため、心理的評価も重要です。心理テストカウンセリングを通じて、ストレスやうつ病などが痛みに影響しているかどうかを評価し、治療方針を決定します。

慢性疼痛の治療法

慢性疼痛の治療は、痛みそのものの軽減だけでなく、生活の質を向上させることを目指します。治療法は複数あり、痛みの原因や患者の状態に応じて、さまざまなアプローチが取られます。

薬物療法

慢性疼痛の治療には、以下のような薬物療法が用いられることがあります。

  • 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs):軽度から中度の痛みや炎症を抑えるために使用されます。
  • 鎮痛薬:アセトアミノフェンなど、痛みを軽減するために用いられる薬です。
  • 抗うつ薬:慢性疼痛の一部には、低用量の抗うつ薬が効果的です。これにより、痛みを抑える神経伝達物質のバランスを改善します。
  • 抗けいれん薬:神経障害性疼痛に対しては、抗けいれん薬が有効です。神経の異常な信号を抑える効果があります。

理学療法と運動療法

理学療法運動療法は、慢性疼痛の緩和に役立ちます。特に筋骨格系の疼痛では、適切な運動やストレッチを行うことで筋力を強化し、姿勢や関節の可動域を改善することで痛みを軽減する効果があります。

リハビリテーション理学療法士の指導を受けながら、痛みを悪化させない範囲での運動を行うことが重要です。

鍼灸療法

鍼灸は、慢性疼痛に対する効果的な補完代替医療として注目されています。鍼を用いて特定の経穴(ツボ)に刺激を与えることで、痛みを緩和し、筋肉の緊張をほぐす効果が期待されます。鍼灸は、特に神経障害性疼痛や筋骨格系の疼痛に対して有効であるとされ、体の自然治癒力を高め、痛みを軽減する手段の一つとして利用されています。

心理療法と認知行動療法(CBT)

心理療法認知行動療法(CBT)は、慢性疼痛に伴うストレスや感情的な負担を軽減するための有効な方法です。CBTは、患者が痛みを感じる際の思考や感情のパターンを認識し、それを変えることで痛みの認識を改善します。

痛みによる不安やうつ状態を緩和することが、痛み自体の軽減にもつながるため、心理的な治療は非常に重要です。

神経ブロック療法

神経ブロック療法は、神経に局所麻酔薬を注入することで痛みの伝達を一時的に遮断する方法です。神経ブロックは、神経障害性疼痛や難治性の痛みに対して効果があり、痛みの原因となる神経を一時的に麻痺させることで、痛みを軽減します。

慢性疼痛との付き合い方

慢性疼痛は、長期間にわたって続くため、痛みとの上手な付き合い方が必要です。以下に、慢性疼痛を和らげるための実践的なアプローチをいくつか紹介します。

ストレス管理

ストレスは、慢性疼痛を悪化させる要因となるため、ストレス管理が重要です。リラクゼーション法や呼吸法、マインドフルネス瞑想など、ストレスを軽減するための方法を日常生活に取り入れることで、痛みの緩和が期待されます。

規則正しい生活

慢性疼痛を和らげるためには、規則正しい生活習慣を維持することが大切です。十分な睡眠、バランスの取れた食事、適度な運動を行うことで、体と心を健康に保ち、痛みの感受性を低下させる効果があります。

サポート体制の確保

慢性疼痛を抱える人にとって、家族や友人、医療スタッフとのサポート体制が不可欠です。痛みによる孤独感や不安を軽減し、日常生活の中で支え合うことが、痛みの軽減に寄与します。また、慢性疼痛に関する支援グループに参加することも、精神的なサポートを得る有効な手段です。

慢性疼痛のまとめ

慢性疼痛は、単なる身体の痛みだけではなく、精神的、感情的な影響も大きい状態です。痛みが長期にわたって続くと、生活の質が低下し、社会生活や仕事に支障をきたすことがあります。

慢性疼痛の治療には、薬物療法や理学療法、鍼灸、心理療法など、さまざまなアプローチが必要です。痛みの原因を特定し、適切な治療法を見つけることで、痛みを和らげ、より快適な生活を取り戻すことが可能です。

慢性疼痛に悩む方は、痛みを軽減するだけでなく、ストレス管理や生活習慣の改善、サポート体制の整備を通じて、痛みと上手に付き合う方法を見つけていくことが重要です。てんかん患者は運転や日常生活の制限に直面することがありますが、サポートを受けながら生活の質を向上させることができます。引き起こされる可能性があります。活動電位のメカニズムを理解することは、神経科学や生理学、医学の重要な基礎となります。

関連:鍼灸とは?鍼灸の基礎知識
関連:鍼灸師と助産師の他職種連携は可能か?
関連:「ウエルビーイング」 鍼灸師が知るべき基礎知識
関連:産後の体調回復に効果的なツボ
関連:睡眠の質を高めるツボ4選
関連:生理痛に効果的なツボとお灸
関連:ことわざ「お灸をすえる」とは?意味や使い方

2024年10月9日(水曜日)オンラインセミナー産後うつのための鍼灸と養生のリンクバナー
鍼灸柔整キャリアラボへのリンク
鍼灸関連学会・セミナー・イベント
鍼灸師・あんまマッサージ指圧師・柔道整復師を目指す全国養成校 大学・専門学校一覧のバナーリンク

この記事を書いた人

アバター

日本鍼灸大学

日本鍼灸大学は「世間と鍼灸を学問する」をコンセプトに有志の鍼灸師とセイリン株式会社が立ち上げたWebとYouTubeチャンネルです。普段、世間話と鍼灸学のお話しを井戸端会議的に気軽に楽しめる内容に仕立て日本鍼灸の奥深さを鍼灸学生に向けて提供します。
※当サイトは学校教育法に則った大学施設ではありません。文部科学省の指導の元、名称を使用しています。

2023年より鍼灸柔整キャリアラボを試験的にスタート!鍼灸柔整キャリアラボは『詳細はこちら』ボタンからアクセス。