脳卒中の包括的予防ガイド:健康を守るためのステップ

1. 脳卒中とは?原因と特徴を知ることが予防の第一歩

脳卒中(脳血管障害)は、脳内の血流が突然途絶える、または出血することで脳細胞がダメージを受ける病気です。
日本では死因の上位に位置する重大な疾患であり、発症後の後遺症も生活の質(QOL)に大きく影響します。

脳卒中は大きく分けて2種類あります。

● 脳梗塞(のうこうそく)

概要:
脳の血管が詰まり、血流が途絶えることで脳細胞が酸素不足に陥る状態。
主な原因:

  • 動脈硬化
  • 心房細動など心疾患による血栓(心原性塞栓)
  • 高脂血症や糖尿病による血管障害

高齢者だけでなく、生活習慣病やストレス、喫煙がある方にもリスクがあります。

● 脳出血(のうしゅっけつ)

概要:
脳の血管が破れ、血液が脳組織内に漏れ出すことで圧迫・損傷を引き起こす状態。
主な原因:

  • 高血圧
  • 脳動脈瘤の破裂
  • 動静脈奇形などの血管異常

突然の頭痛・嘔吐・意識障害を伴うケースもあり、一刻を争う緊急疾患です。


2. 脳卒中の主な原因とリスク要因

脳卒中は、複数の生活習慣や慢性疾患が重なることでリスクが高まります。以下の要因を意識的に管理することが予防の基本です。

原因説明
高血圧最も大きなリスク。血管壁への圧力が高まり、破裂・詰まりの原因に。
動脈硬化コレステロールや脂質が血管内に蓄積し、血流を阻害。
心臓疾患心房細動などでできた血栓が脳へ飛び、脳梗塞を起こす。
糖尿病血管がもろくなり、血流障害を起こしやすくなる。
喫煙・過度の飲酒血圧上昇や血管収縮を招き、血管トラブルのリスクを増大。
ストレス・睡眠不足自律神経が乱れ、血圧変動やホルモンバランスの悪化を引き起こす。

3. 脳卒中のサインに早く気づく!代表的な症状

脳卒中は「時間との勝負」です。次のような症状が出た場合は、**一刻も早く救急要請(119番)**が必要です。

  • 片側の顔・腕・脚の麻痺やしびれ
  • 言葉が出ない/呂律が回らない
  • 視界がぼやける、二重に見える
  • 突然の激しい頭痛(経験したことがない痛み)
  • ふらつきや歩行困難、めまい
  • 意識がもうろうとする

特に、「片側だけの異常」「話しづらさ」「笑顔がゆがむ」は、救急搬送が必要な典型的サインです。


4. 診断の流れ:何を調べるのか?

脳卒中が疑われると、次のような検査が行われます。

  • CTスキャン:出血や血栓の有無を迅速に確認
  • MRI:小さな梗塞や初期の損傷を詳細に検出
  • 頸動脈エコー:首の血管の動脈硬化や狭窄を評価
  • 血液検査:血糖・脂質・凝固因子を測定
  • 心電図/心エコー:血栓の発生源となる心疾患を調べる

これらを組み合わせることで、原因・発症時期・適切な治療法が判断されます。


5. 脳卒中の治療法:時間とリハビリが鍵

① 急性期治療(発症直後〜数時間以内)

  • tPA(血栓溶解療法):発症4.5時間以内なら、血栓を溶かして血流を回復
  • 血栓除去術:カテーテルで血栓を取り除く外科的治療

※時間との勝負。症状が出たら「迷わず救急車」が鉄則です。

② 薬物療法

  • 抗血小板薬(アスピリン等):血小板の凝集を防ぎ、再発予防
  • 抗凝固薬(ワルファリン、DOACs等):血液の固まりを防ぐ

③ リハビリテーション

  • 理学療法(PT):運動・筋力・バランス回復
  • 作業療法(OT):日常生活動作の再学習
  • 言語療法(ST):発語・理解・嚥下機能の改善

早期リハビリが「回復の鍵」です。脳は柔軟に新しい神経ネットワークを形成できるため、継続的な刺激が非常に重要です。


6. 鍼灸による脳卒中の予防とサポート

鍼灸は、血流調整・自律神経の安定・ストレス軽減などを通じて、脳卒中のリスク低減や再発予防の一助となると考えられています。

鍼灸が期待できる主な作用

  • 交感神経の過緊張を和らげ、血圧の急変を防ぐ
  • 血管の弾力性を改善し、血流をスムーズに保つ
  • ストレスによる血圧上昇・ホルモンバランスの乱れを緩和
  • 睡眠の質を改善し、回復力を高める

また、脳卒中後のリハビリ期にも、鍼灸がサポートとして使われることがあります。
麻痺の改善、筋肉のこわばり緩和、疲労回復、精神的安定などを目的に、医療機関やリハビリ施設でも併用されることがあります。


7. 脳卒中を防ぐための生活習慣

対策内容
血圧管理自宅での定期測定+医師の指導を守る
食事改善減塩・低脂質・野菜中心の食事(地中海式・和食)
適度な運動ウォーキング・ストレッチなどを週3〜5回
禁煙・節酒喫煙は動脈硬化を促進、アルコールは血圧上昇を招く
ストレスケア瞑想・呼吸法・鍼灸・マッサージなどで心身を緩める
定期健診血糖・コレステロール・心電図などを年1回はチェック

これらの積み重ねが、脳卒中の「一次予防(発症を防ぐ)」にも「二次予防(再発を防ぐ)」にも直結します。


8. まとめ:脳卒中を「防ぐ・気づく・回復する」ために

脳卒中は、早期発見・早期治療・予防管理がそろえば、十分にコントロール可能な疾患です。

  • 高血圧や動脈硬化を放置しない
  • 「片側の麻痺・言葉のもつれ」は迷わず救急要請
  • 回復後も生活習慣とリハビリを継続
  • 鍼灸などの自然療法を取り入れ、血流と自律神経の安定をサポート

「脳卒中にならない体づくり」は、日々の小さな選択から始まります。
西洋医学と東洋医学を上手に組み合わせ、からだ全体の調和を整えることが、最良の予防医療といえるでしょう。

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