不眠症に対する鍼治療には、睡眠の改善を示す研究があります。ただし、研究の規模や質、施術方法の違いに課題があり、効果を確実なものとして説明することはできません。「数回で眠れる」「睡眠薬の代わりになる」とも一律にはいえません。
眠れない状態が続くときは、原因を確認することが大切です。この記事では、鍼灸を検討する前に知っておきたい研究結果と、治療を相談するときのポイントを紹介します。
不眠症に対する鍼の効果は、どこまで分かっている?
米国の国立補完統合衛生センター(NCCIH)は、不眠に対する鍼の研究について、改善の可能性がある一方、研究の質に限界があると説明しています。
紹介されている2021年のレビューは、11件の研究、計775人を対象としています。ただし、個々の研究は小規模で、施術の量や経穴(ツボ)の選び方などにも違いがありました。
そのため、「誰に、どの方法で、何回行えば効果が出るか」までは、この結果から決められません。また、鍼の研究結果を、そのままお灸や自宅でのツボ押しに当てはめることもできません。
眠れないときは、夜と昼の状態を確認する
不眠には、寝つきにくい、夜中に何度も目が覚める、早朝に目覚めて眠れないなど、さまざまな困りごとがあります。
必要な睡眠時間には個人差があります。時間だけで判断せず、日中の疲労や集中しにくさなど、生活への影響も確認しましょう。
医療機関や鍼灸院で相談するときは、次の内容を簡単にメモしておくと説明しやすくなります。
- いつから、どのように眠れなくなったか。
- 寝る時刻と起きる時刻のおおよその目安。
- 日中の眠気や疲労、仕事・家事への影響。
- 昼寝、カフェイン、飲酒の習慣。
- 使用している薬やサプリメント。
正確に記録しようとして負担を増やす必要はありません。まずは、特につらいことを伝えてください。
参考:NHS:不眠の症状と原因
医療機関ではどのような治療を相談できる?
不眠には、ストレスや生活環境だけでなく、病気や薬が関わる場合もあります。医療機関では原因を確認し、必要に応じて別の睡眠障害の可能性も調べます。
治療の選択肢には、不眠に対する認知行動療法(CBT-I)があります。睡眠を妨げる考え方や行動を見直していく治療です。
生活習慣を変えても改善しない、眠れない状態が長引く、日常生活への支障が大きい場合は、かかりつけ医や睡眠外来に相談しましょう。いびきや睡眠中の呼吸の停止を指摘された場合も、そのことを伝えてください。
鍼灸を希望する場合は、現在の治療との併用について相談してください。処方されている薬を自己判断で減らしたり中止したりせず、変更の希望は処方した医師に伝えましょう。
鍼灸を受ける前に確認したいこと
施術者には「寝つくまでがつらい」「夜中に何度も目が覚めて疲れる」など、困りごとを具体的に伝えます。
そのうえで、次の点を確認しておきましょう。
- どのような施術を行うのか。
- 何を改善の目安にするのか。
- いつ、継続するかどうかを見直すのか。
- 費用や通院の負担はどれくらいか。
- 改善しない場合は、どこへ相談するのか。
鍼は、薬を使わないことを理由に「リスクがない」とはいえません。不適切な施術や衛生管理によって、感染や臓器の損傷などが起こる可能性があります。施術方法や衛生管理、起こり得る不利益について説明を受けてください。
効果は「その日の眠り」だけで判断しない
施術を検討するときは、睡眠と日中の生活をどのように振り返るか、あらかじめ決めておくと相談しやすくなります。
例えば、寝つくまでのつらさ、夜中の目覚め、翌日の疲労などです。施術以外に、仕事の忙しさや生活習慣、服薬が変わっていないかも一緒に振り返りましょう。
「一晩よく眠れた」という体験は大切ですが、それだけで不眠の原因が解消したとは判断できません。改善が感じられないときや負担が大きいときは、そのまま続けず、方針を相談してください。
日常生活で見直せること
毎日の起床時刻をできるだけそろえ、眠くなってから床に入ることや、寝室を暗く静かにすることを試してみましょう。就寝前のカフェインや飲酒も見直すポイントです。
ただし、生活習慣の工夫だけでは解決しない不眠もあります。眠れないことを努力不足と考えず、生活への支障が続く場合は相談してください。
よくある質問
鍼灸は何回受ければ眠れるようになりますか?
一律の回数は示せません。研究結果から個人の経過を予測することは難しいため、目標と見直しの時期を施術者と相談してください。
睡眠薬の代わりに鍼灸を受けてもよいですか?
自己判断で治療を置き換えないでください。鍼灸を希望していることを処方医に伝え、併用や薬の扱いについて相談しましょう。
不眠に効くツボを押すだけで十分ですか?
ツボの場所だけでは、不眠の原因や適切な治療は判断できません。眠れない状態が続く場合や日中の生活に支障がある場合は、ツボ押しだけで対処し続けず、医療機関へ相談してください。
鍼が苦手でも相談できますか?
相談できます。施術への不安を伝え、方法や選択肢について説明を受けてから、受けるかどうかを決めてください。






