GRADEは、ある評価項目について集めた研究結果を、どの程度確かなものとして受け止められるかを整理する枠組みです。エビデンスの確実性を「高・中・低・非常に低」の4段階で示します。「確実性が低い」は「効果がない」と同じ意味ではなく、示された効果の見積もりに不確かさが残るという意味です。
GRADEは一つの論文の点数ではない
GRADEはGrading of Recommendations Assessment, Development and Evaluationの略です。ここでは、治療などの介入を比較したレビューで、エビデンスの確実性を読む際の基本を扱います。正式な評価を自分で行うための完全な手順ではありません。
重要なのは、評価項目ごとに、その問いに関わる研究のまとまりを評価する点です。同じレビューでも、痛み、生活機能、有害事象などで確実性が異なることがあります。「この論文は全部高い」「この治療は全部低い」と一括りにしないようにします。
「高・中・低・非常に低」は何を表す?
確実性は、効果の見積もりへの信頼を表します。以下は読解のための簡略な説明です。
- 高(High)
- 効果の見積もりに強い信頼がある。
- 中(Moderate)
- 見積もりへの信頼は中程度で、実際の効果が大きく異なる可能性もある。
- 低(Low)
- 見積もりへの信頼は限られ、実際の効果が大きく異なる可能性がある。
- 非常に低(Very low)
- 見積もりへの信頼が乏しく、実際の効果は大きく異なる可能性が高い。
「高い」からといって、効果が大きい、全員に効く、安全性も十分確認されたという意味にはなりません。何についての確実性なのかと、結果そのものを分けて読みます。
確実性が下がる主な5つの理由
Cochraneのハンドブックは、確実性を下げる要因として次の5領域を示しています。レビューでは、評価の理由が脚注などに記されているかを確認します。
- バイアスのリスク:研究の進め方によって、結果に偏りが入り得る。
- 非一貫性:研究間で結果が食い違い、その違いを十分に説明できない。
- 非直接性:調べたい対象者、介入、比較対象、評価項目などと、得られた研究の条件にずれがある。
- 不精確さ:効果の見積もりの幅などが、判断するうえで十分に絞られていない。
- 出版バイアス:結果によって研究が公表されにくいなど、利用できる情報が偏っている可能性がある。
研究数が多いだけで、これらの問題が解消するとは限りません。また、実際のGRADE評価には判断の基準や、条件によって確実性を上げる検討もあります。上の一覧だけで独自に点数を付け、正式なGRADE評価として公表することは避けてください。
効果の大きさ・確実性・推奨を分けて読む
効果の大きさは「どの程度違いがあるか」、確実性は「その見積もりをどの程度信頼できるか」です。さらに、何を勧めるかという判断では、利点と不利益、患者さんの希望なども考える必要があります。確実性の表示を、そのまま施術の推奨や適応の判定へ置き換えないようにします。
例えば、あるレビューが「短期の痛み」について低い確実性とした場合、その評価を長期の生活機能や安全性へ広げることはできません。これは読み方を示す仮定の例で、特定の鍼灸研究の結論ではありません。
鍼灸師がレビューを読むときの確認順
次は、当サイトの学習用の整理案です。GRADEを新たに採点する手順ではありません。
- 対象者と比較を確認する。誰に行ったどの鍼灸施術を、何と比べたのかを読む。
- 評価項目と時点を確認する。痛み、生活機能、有害事象など、何をいつ測った結果かを確かめる。
- 結果の大きさと幅を見る。差の大きさ、信頼区間、参加者数などを確認する。
- 確実性と理由を一緒に読む。4段階のラベルだけでなく、下げた理由や脚注を確認する。
この情報は、レビューの「Summary of findings(結果の要約表)」に整理されていることがあります。研究の基本的な点検は、鍼灸研究論文の読み方と5つの視点も参考にしてください。
患者さんへの説明では、例えば「この評価項目については、結果に不確かさが残ります」のように、確認した範囲を伝えます。確実性だけで施術を決めず、本人の状態と希望、必要な医療を合わせて考えます。対話の進め方は共同意思決定(SDM)の声かけと記録例でも扱っています。
本稿は研究の読み方の説明です。個別の診断や施術の適否を判断するものではなく、必要な診察・治療を後回しにしたり、服薬の中止・変更を指示したりする根拠にはなりません。
よくある質問
確実性が低いなら、効果はないのですか?
それだけでは判断できません。確実性は見積もりへの信頼を示すため、結果の方向、大きさ、幅、評価が下がった理由を併せて確認します。
確実性が高ければ、患者さんへ必ず勧めてよいですか?
必ず勧めるという意味ではありません。効果の大きさと不利益、本人の状況や希望なども考え、評価した結果の範囲を超えて説明しないことが大切です。






