冷え性にお灸は効く?低体温の原因と改善法、ツボでできるセルフケア

冷え性と低体温とは?放っておけない体のサイン

「手足がいつも冷たい」「体が温まらない」──そんな冷え性は、ただの体質ではなく体の不調を示すサインかもしれません。
特に体温が35.5℃以下になる「低体温」は、免疫力の低下や体調不良の原因となり、長く続くと健康に大きな影響を与えます。

低体温の主な原因には次のようなものがあります。

  • ストレスによる自律神経の乱れ
  • 運動不足や加齢による筋肉量の低下
  • 過度なダイエットや栄養不足
  • 長時間の寒冷環境での生活

初期症状は体の震え、手足の冷え、皮膚感覚の鈍化など。進行すると震えすら止まり、歩行困難や意識障害に至ることもあります。冷えを「ちょっと不快」程度で放置せず、体からの警告として捉えることが大切です。


西洋医学からみた低体温のリスク

現代医学では、低体温は基礎代謝の低下や血流障害、免疫力の低下と関連すると考えられています。体温が1℃下がると、免疫力は30%近く低下するとも言われ、風邪や感染症にかかりやすくなるほか、疲労感や集中力の低下、不眠なども招きます。

また女性の場合は、冷え性が月経不順や不妊、ホルモンバランスの乱れとも関係していることが多く、早めの対策が望まれます。


東洋医学からみた「冷え」

鍼灸や漢方など東洋医学では、冷えは「気・血・津液(しんえき=体液)の巡り」が滞った状態、あるいは「陽気(体を温める力)の不足」と考えられています。

  • 気虚(ききょ):体を温めるエネルギーが不足
  • 血虚(けっきょ):血の不足で全身に栄養と熱が届かない
  • 腎陽虚(じんようきょ):体を根本から温める力の低下

鍼灸では、これらの証(体質や状態)に応じてツボを選び、体のバランスを整えることで冷えを改善していきます。


お灸でできる冷え性対策|おすすめのツボ

お灸は体を内側から温め、血流を改善し、自然治癒力を高めるセルフケアとして有効です。特に冷え性の方におすすめの代表的なツボを紹介します。

三陰交(さんいんこう)

足首の内側、くるぶしから指4本分上に位置。
婦人科疾患や冷え性の改善に効果があるとされ、「女性のツボ」とも呼ばれます。

足三里(あしさんり)

膝のお皿の外側から指4本分下、すねの外側にあるツボ。
胃腸を整え、全身のエネルギーを高める作用があり、疲労や冷えの改善に役立ちます。

風門(ふうもん)

背中の上部、首の付け根から少し下にあるツボ。
風邪予防に使われ、冷えによる免疫力低下を防ぐサポートに。

👉 初めての方はドラッグストアで購入できる「せんねん灸」などの台座灸を使用するのがおすすめ。熱さを感じたら無理をせず外しましょう。


お灸と生活習慣を組み合わせた冷え性改善

冷え性を根本から改善するには、お灸だけでなく生活習慣の見直しも重要です。

  • 三首(首・手首・足首)を温める:太い血管が通る部分を保温すると全身が効率よく温まります。
  • 食事の工夫:炭水化物・タンパク質をしっかり摂り、体を温める根菜類やショウガを取り入れる。
  • 適度な運動:ウォーキングやストレッチで筋肉を動かし、基礎代謝を高める。
  • 入浴習慣:シャワーだけでなく、湯船に浸かって芯から温める。

これらをお灸とあわせて行うことで、より効果的に冷え性を改善できます。


鍼灸師・鍼灸学生にとっての「冷え性治療」のポイント

臨床の現場では「冷え」は非常に多い訴えです。鍼灸師や学生にとっては、以下の点を意識すると理解が深まります。

  • 冷えのタイプ(気虚・血虚・腎陽虚など)を見極めること
  • 症状の局所(手足だけ冷える、全身が冷えるなど)を確認すること
  • ツボを単独で使うのではなく、体質全体に合わせて処方すること

冷えの治療は「全身の調和を整える」基本に立ち返るよい学びの機会になります。


まとめ|冷え性を放置せず、お灸で温める習慣を

冷え性や低体温は、単なる体質ではなく体のバランスの乱れを示すサインです。西洋医学的には免疫力や代謝の低下、東洋医学的には陽気や血の不足として捉えられます。

お灸は手軽にできるセルフケアであり、三陰交・足三里・風門といったツボを活用することで、体を内側から温めるサポートとなります。さらに、食事・運動・入浴などの生活習慣を見直すことで、冷えに強い体づくりが可能です。

鍼灸師や鍼灸学生にとっては、冷え性の理解と治療は臨床の基礎力を養う格好のテーマ。一般の方にとっても、日々のお灸と生活習慣の工夫で健康を守る大切な習慣となるでしょう。

冷えを放置せず、体を温めるケアを今日から取り入れてみてください。

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大好きなことに情熱のすべてを注ぎなさい
ジム・ロジャーズ(投資家)

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